イスラエル 3度目ロックダウンを解除

経済活動、段階的に再開へ

 新型コロナウイルス感染拡大阻止のためにイスラエル全土で昨年12月25日から始まった3度目のロックダウン(都市封鎖)が2月7日、解除となった。ネタニヤフ首相は8日、ワクチン接種センターでの記者会見で「われわれは国家非常事態にあり、過去30日間で死亡した1536人のうち97%以上がワクチン未接種だった」と述べ、国民に変異株にも有効とされる米製薬大手ファイザーが開発したコロナワクチンの接種を促した。イスラエルは、経済活動の段階的な再開を目指しており、観光業の回復に向けた取り組みやコロナ治療薬の開発も同時進行中だ。(エルサレム・森田貴裕)

免疫証明システムを導入
独自の治療薬開発も進む

 保健省によると、14日の時点で、1日の新規感染者数は数千人と減少し、重症者数も約1000人となり減少傾向にある。累計感染者数は72万人超、死者数は5403人となった。390万人以上が初回のワクチンを接種し、253万人以上が2回目の接種を終えた。年齢別では、重症化のリスクが高い60歳以上の90%、40歳から60歳までの73%、16歳から40歳までの50%が接種を受けている。

新型コロナウイルスのワクチン注射を受けるイスラエルのネタニヤフ首相=1月9日、テルアビブ近郊ラマトガン(EPA時事)

新型コロナウイルスのワクチン注射を受けるイスラエルのネタニヤフ首相=1月9日、テルアビブ近郊ラマトガン(EPA時事)

 イスラエル政府は、新型コロナ免疫証明システム「グリーンパス」を導入し、2回目のワクチンの接種を終えた者やコロナ感染後に回復した免疫保持者を対象にホテル、ジム、レジャー施設などを再開する計画だ。保健省の携帯アプリを通じて免疫保持を証明でき、該当しない者は、コロナ検査で陰性証明を取得してから72時間以内はレジャー施設を利用できるとしている。

 イスラエルのメディアによると、政府の計画では2月23日から、免疫保持者はショッピングモール、市場、ジム、プール、美術館、ホテル(食事なし)を使用することが可能になるという。通りに面した店舗やシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)が再開される可能性もあるという。集会は屋内で10人、屋外で20人に緩和される。

 計画の第2段階として、3月9日から一部のカフェやレストランが一般の人々向けに再開される。免疫保持者は、レストラン、食堂付きのホテル、イベントホール、会議場、その他のアトラクションを利用することが可能となる。集会の規制は、屋内で20人、屋外で50人とさらに緩和されるという。

 政府の新型コロナ対策の責任者ナフマン・アッシュ氏は14日、「罹患率は低下しているが、新たな感染の波や都市封鎖を避けるため、再開は慎重に行う必要がある」と述べた。今月25日と26日に行われるユダヤ教の祭り「プリム祭」に多くの規制違反者が出る可能性があることから、集会を防ぐために、祭り期間中の夜間外出禁止令を勧告するよう設定したという。

 また、ほぼ1年にわたるコロナ感染拡大で観光業に大打撃を受けているイスラエルは14日、コロナのワクチン接種を受けた旅行客の検疫を免除し、キプロスとの往来を再開できるようにする観光協定を発表した。協定は4月1日に発効する予定。イスラエルは8日にも、ギリシャと同様の観光協定で合意している。

 治療薬の開発も進められている。テルアビブのイチロフ病院の統合がん予防センターの所長であるナディル・アルバー教授が開発したコロナ治療薬「EXO-CD24」は、投与された中等度から重度の30人の患者のうち、29人が2日以内に著しい改善を示したという。アルバー教授は、「薬は1日1回わずか数分、5日間吸入する」と述べ、効果的で安価と自賛する。

 東地中海の島国キプロス共和国(ギリシャ系)のアナスタシアディス大統領は、イスラエルが独自に開発しているコロナ治療薬について「非常に興味を持っている」と述べ、今後の臨床試験にはキプロスが参加すると述べた。