中露の「権威主義」に対抗 バイデン米大統領初の外交演説
同盟関係の「修復」強調
バイデン米大統領は4日、国務省で就任後初めてとなる外交政策に関する演説を行い、「同盟関係を修復し、再び世界と関わる」と述べ、国際協調路線への回帰を強調。その上で「米国と張り合う中国の野心や民主主義を傷つけるロシアの決意といった権威主義の増長に向き合わなければならない」と述べ、中露に対抗する姿勢を示した。
バイデン氏は中国について「最も深刻な競争相手」と位置付け、「攻撃的で威圧的な行動、人権、知的財産、グローバル・ガバナンス(多国間統治)への中国の攻勢に対抗する」と主張。同盟関係の強化や国際機関での役割拡大を通して、「強い立場から競争する」と訴えた。
一方で、「米国の利益になる場合は、中国と協力する用意がある」と述べ、気候変動問題などを念頭に、協力を探る考えも示した。
ロシアについては、プーチン大統領との電話会談で「前任者(トランプ前大統領)とは異なり、米国が(ロシアによる)選挙介入やサイバー攻撃などの侵略的な行為を見逃した時代は終わったことを明確にした」と主張。ロシア政府が収監した反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏の無条件の即時釈放を要求した。
新型コロナウイルスのパンデミックや気候変動、核拡散などの世界規模の問題について「国同士が協力して初めて解決できる」と述べ、連携強化を図る考えを示した。日本のほかカナダ、メキシコ、英独仏、北大西洋条約機構(NATO)、韓国、オーストラリアを「最も親しい友人」として、民主国家間の同盟を再構築するとした。
バイデン氏はまた、オースティン国防長官に米軍の世界展開の再検討を指示したと表明。その間、トランプ前政権が決めたドイツ駐留米軍の削減を凍結すると明らかにした。
「世界最悪の人道危機」とされるイエメン内戦については、サウジアラビア主導の連合軍による軍事作戦への支援を停止することを発表。一方で、イランの脅威にさらされるサウジアラビアに対する支援を継続する方針を示した。
ミャンマーで起きたクーデターも非難し、国軍に権力を放棄して拘束された人々を解放するよう要求。クーデターを起こした関係者に「責任を取らせる」として制裁を辞さない構えを示した。
(ワシントン・山崎洋介)