米次期大統領確定 民主主義の前途を覆う暗雲


 自由主義陣営のリーダーである米国の民主主義の前途が暗雲で覆われている。米議会の上下両院合同会議で大統領選の結果が承認され、バイデン前副大統領の次期大統領就任が決まった。

 しかし大規模な不正で当選した可能性のある大統領との見方を、少なからぬ米国民が持っている。米国の民主主義がどうなっていくのか、世界中が注目しているのは当然のことだ。

議事堂侵入で4人が死亡

 両院合同会議が開かれた「運命の6日」に、トランプ大統領の一部支持者が連邦議会議事堂へ侵入し、4人が死亡するという事件が起きた。多くのメディアはトランプ氏が扇動したかのように報じている。当初、ホワイトハウスや議事堂前に集まったトランプ支持者は平和的な訴えを続けていた。トランプ氏の「平和的に愛国的に」行動するよう求めた呼び掛けを逸脱してしまったのは極めて残念だ。

 議会制民主主義の中枢を踏みにじる暴挙として激しく非難されるのは当然だ。このようなことを米国民は許さないだろう。

 議会侵入は、まさに不正の証拠が数多く提出されている激戦州での選挙結果への異議申し立てについて議論を深めようとする時に起きた。結果的に、議論が尽くされないまま選挙結果が承認されたのは遺憾である。

 今後、事件の経緯、扇動者の正体、警備側の対応など真相を明らかにする必要がある。それによって、当初予定していた議論を早々と終わらせたこと、すなわち暴力によって民主的な議論の遂行を実質的に放棄したことが民主主義の汚点として歴史に記録される可能性があろう。

 そもそも、平常通りの選挙結果の承認が進まなかった根本の原因は、バイデン陣営による巨大な選挙不正疑惑にあった。何百人もの国民が宣誓供述し不正を訴えているにもかかわらず、主要メディアはその本来の使命である検証作業を行わず証拠がないと決め付け、州の裁判所から連邦最高裁に至るまで、政治的な判断に関与したくないとしてまともに訴えに向き合おうとしなかった。

 民主主義の基礎となる公正な選挙が踏みにじられたとすればそれは民主主義への冒瀆である。トランプ陣営の不正の訴えが民主主義を毀損(きそん)したとバイデン陣営は批判したが、それは全く逆であろう。

 トランプ氏はビデオメッセージで「私の唯一の目的は投票の公正性を確証することだった。それを行うことで、米国民主主義を守るために戦ってきた」と述べた。さらに「確信と信頼を将来の選挙に対して確実にするために」として選挙法の改正の必要性を訴えた。公正な選挙への信頼を確保しなければ、米国の民主主義が崩壊してしまう。

分断を克服できるか

 トランプ氏は「20日には新政権が誕生する」とし「スムーズで秩序ある、途切れない政権の移行」に協力すると述べた。自身の敗北を事実上、認めて米国の一致結束をも呼び掛けたが、米国にもたらされた分断は極めて深刻だ。これをバイデン次期政権は克服して世界の指導国にとどまることができるのか。バイデン次期大統領に課せられた課題はあまりにも大きい。