米の対中制裁法案 トランプ氏は早急に署名を


 米議会で、中国当局者らによる香港の自治侵害に対して制裁を科す「香港自治法案」が通過した。トランプ大統領が署名すれば成立する。
 中国が成立を強行した香港国家安全維持法(国安法)への対抗措置である。トランプ氏は早急に署名すべきだ。

香港の自治侵害を対象に

 法案は、中国による香港の自治侵害に実質的に関与した中国当局者を含む外国人や組織、こうした人物や組織と取引のある海外の金融機関に制裁を科すというものだ。

 香港での反政府活動を中国政府が直接取り締まることを可能にする法律が、香港立法会(議会)の審議なしに適用されることで、返還後50年間は維持すると中国が約束した香港の「一国二制度」は骨抜きにされたと言える。国際公約を破り、香港の高度な自治を損なう悪法は断じて容認できない。

 トランプ氏は国安法への対抗措置として、香港への優遇措置を一部停止すると発表した。香港への防衛機器の輸出を停止し、軍民両用技術の輸出を中国本土並みに規制する措置を講じるというもので、ポンペオ国務長官は、香港と中国本土への輸出を区別できなくなったが故に「米国の国家安全保障のため今回の措置を取ることを余儀なくされた」と、優遇見直しの理由を説明した。

 香港の自治侵害に関与した中国共産党員らへのビザ(査証)制限に続く対中圧力政策だ。日本などの民主主義国家は、米国と歩調を合わせ、中国への圧力を強めていくべきだ。

 国安法運用に当たって、中国政府は香港に治安機関「国家安全維持公署」を開設。同公署の署長には、かつて広東省汕尾市で地元住民の抗議活動を処理した経験を持つ強硬派の鄭雁雄氏が就任した。

 香港返還23年に当たる今月1日には、国安法適用で10人が逮捕された。香港市民の間には恐怖感が広がっている。

 超党派の米上院議員は、平和的なデモへの参加を理由に迫害される可能性がある香港市民を「難民」として認定する法案を提出した。受け入れの上限は設けない。下院でも同様の法案が提出されている。香港の民主化を目指すデモ参加者を保護する狙いがある。国際社会は香港市民と連帯し、中国に対抗していく必要がある。

 国安法施行を機に、中国が台湾への圧力を強めていくことも懸念される。中国が中台統一の基礎として導入を主張している一国二制度について、台湾の蔡英文総統が「絵に描いた餅だということが証明された」と述べ、断固拒否する考えを改めて示したことは理解できる。

 台湾政府は「自由、人権、民主を求める香港人を支持する」(蔡氏)との方針に基づき、香港から台湾への移住希望者に対する支援窓口の運用を始めた。蔡政権は米国や日本など「同じ価値観を持つ国」とのつながりを一段と強める見通しだ。

習氏国賓来日は中止せよ

 香港市民や少数民族を抑圧する中国の習近平国家主席を、わが国に国賓として迎えることはできない。習氏の国賓来日は中止すべきだ。