【2020米大統領選】「トランプ劣勢」は本当か
大手世論調査 精度に疑問
実際は接戦の可能性も
11月の投票日まで4カ月を切った米大統領選は、民主党のバイデン前副大統領のリードを伝える世論調査結果が相次いでおり、共和党のトランプ大統領は再選が厳しくなったとの印象を与えている。
 だが、世論調査はどこまで信頼できるのか。2016年の前回大統領選は、民主党のクリントン候補が優勢という世論調査と逆の結果となっただけに、過信は禁物だ。(編集委員・早川俊行)
ニューヨーク・タイムズ紙は先月26日付で、大統領選の勝敗を左右する激戦6州すべてで、バイデン氏がトランプ氏をリードしているとの世論調査結果を公表した。トランプ氏が前回選挙で僅差で勝利したラストベルト(さび付いた工業地帯)のミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア3州で10~11ポイント、大票田のフロリダ州でも6ポイントの差が開いているという。これを聞けば、トランプ氏の再選はかなり厳しいとの印象を受ける。
前回の大統領選では、激戦州の世論調査が実際の選挙結果と大きく食い違った。そうした中、民主党の強固な地盤であるミシガン、ペンシルベニア両州で、トランプ氏の勝利を予想する世論調査結果を唯一発表したのが、「トラファルガー・グループ」という無名の調査会社だった。同社はフロリダ、ノースカロライナ両州でも、トランプ氏の勝利を当てている。
同社は、トランプ氏に否定的な社会の風潮から、一部のトランプ支持者は世論調査に正直に答えていないと分析。有権者本人が誰を支持しているかだけでなく、周囲の人は誰を支持していると思うか、という質問を設け、できるだけ本音を引き出そうとしたことが、精度の高い調査結果につながった。
そのトラファルガー・グループが最近実施した世論調査では、ミシガン州でのバイデン氏のリードは0・9ポイントにとどまる一方、ウィスコンシン州では逆にトランプ氏が0・9ポイントリードしているとの結果が出た。フロリダ州ではほぼ同率だった。前回大統領選での同社の実績を考えれば、実際の選挙戦は一般的な理解よりも拮抗しているとみた方がいいかもしれない。
同社の上級ストラテジスト、ロバート・カーリー氏はメディアの取材に、有権者がトランプ支持を公言しにくい風潮は「4年前よりひどくなっている」と話している。大手メディアによるトランプ叩(たた)きは激しさを増しており、世論調査に本音を言わない有権者は、以前より増えている可能性がある。
また、トラファルガー・グループの調査によると、ミシガン州では黒人の11・8%がトランプ氏を支持した。前回大統領選でトランプ氏に投票した同州の黒人は6%だった。白人警官による黒人暴行死事件を受けて広がった抗議デモへの対応をめぐり、トランプ氏が激しい批判を浴びた後に行われた調査だけに、驚きの数字である。
低学歴の白人有権者の声が正しく反映されていないことも、多くの世論調査で精度が欠ける一因と指摘されている。民主党支持者が多い高学歴の白人と比べ、共和党支持者が多い低学歴の白人は世論調査にあまり答えない傾向がある。また、インターネットを利用した世論調査も増えているが、精度を疑問視する見方もある。





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