ウイグル人権法案 少数民族への弾圧を許すな


 米上院が、中国政府による新疆ウイグル自治区のウイグル族への弾圧に関し、トランプ大統領に制裁発動を求める法案を全会一致で可決した。早急な成立を求めたい。

100万人以上を拘束

 法案は、ウイグル族や他のイスラム教徒の弾圧に関わった責任者に制裁を科すよう大統領に求める内容。下院は昨年12月に同様の法案を可決したが、上院で修正されたため、成立には下院で再び可決し、大統領が署名する必要がある。法案を提出した共和党のルビオ上院議員らは声明で「全体主義の中国政府による新疆での広範にわたる恐ろしい人権侵害に対抗する重要な一歩だ」と指摘。下院での早期可決を訴えた。

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、ウイグル族にも感染者が出ている。自治区では100万人以上のウイグル族が強制収容所で不当に拘束されているが、ここでも多くの人が感染しているとの証言もある。十分な治療を受けることができるのか危惧される。

 ウイグル族の人たちは感染が広がった湖北省や沿海の工業地域に「出稼ぎ」に行かされたとも言われる。漢族が感染を恐れ、再稼働する工場に集まらないのを補うためだ。

 多くの人が強制収容所にいるので、ウイグル族の経済活動は停滞し、干しブドウや伝統工芸品などの生産活動もできずにいる。感染の危険があっても、当局の管理の下、出稼ぎをせざるを得ない状況だった。

 中国の臓器移植では、ウイグル族の臓器が使われているとされる。国家の利益のため、ウイグル族の生命や健康を犠牲にしているとしか思えない。かつて自治区では核実験が何度も行われ、放射能汚染で19万人が死亡し、129万人が深刻な被害を受けたとの推計もある。

 自治区はシルクロード経済圏構想「一帯一路」の要衝に位置している。このこともあって、自治区ではここ数年でウイグル族の信仰するイスラム教やウイグルの文化・言語もろとも消滅させる動きが加速している。イスラム教の重要な宗教行事であるラマダン(断食月)も許されず、女性は頭を覆うスカーフを禁じられている。学校ではウイグル語を使えず、中国式の教育が行われる。

 さらに、イスラム教の各寺院は「中国共産党の指導と社会主義制度の擁護」を要求されている。無神論の共産党がイスラム教徒を指導下に置くことは、信教の自由を完全に踏みにじるものだ。

 中国当局は、顔面認証機能のあるカメラと電話盗聴を組み合わせたハイテク監視システムを駆使し、ウイグル族への締め付けを強めている。少数民族の文化を否定し、人権を抑圧する中国共産党政権の姿勢は断じて許されない。

民主国家は対中圧力を

 米国では1月、チベット族に関しても人権や信教の自由を擁護する法案が下院で可決されている。

 日本や米国をはじめとする民主主義国家は、自由、人権、法の支配などの普遍的価値観に基づき、中国を強く批判し、圧力を加えていくべきだ。