コロナ禍 中国「一帯一路」に追い風か


覇権めぐる戦い転換点に

 中国は、新型コロナウイルスによる経済危機に付け込み、世界各地で推進している巨大経済圏構想「一帯一路」に基づく開発途上国への投資を拡大することに意欲を示している。

 バンデミック(世界的大流行)によって中国と西側との間の覇権をめぐる戦いは転換点を迎えるとみられている一方で、アナリストらは、中国が米国に代わって世界の経済的パートナーの座を狙っており、警戒すべきだと訴えている。

 元米国務省高官で、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院のダニエル・マーキー教授は「いずれ中国に出し抜かれるか、すでに始まっている可能性もある」と、中国が一帯一路によって世界経済で米国の地位を奪おうとしているのではないかと懸念を表明した。

 さらにマーキー氏は「欧米の景気後退が長引き、中国が早期に回復すれば、経済的に取引が可能なのは中国だけということになりかねない」と強調した。

 バンデミックによる経済危機に直面している国は増加しており、中国外交筋は一帯一路の拡大に自信を強めている。

 アフリカなどの開発途上国も今後、経済危機に直面するはずだ。

 中国人民大学重陽金融研究院の賈晋京・院長補佐は27日、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報への投稿で、一帯一路が「世界経済の復興をリードする」と主張、「中国は感染拡大との戦いに勝利し、生産再開を進めている。中国経済は3月、大幅に回復。世界的な産業チェーン、サプライチェーンの再建も、一帯一路参加国に大きな機会をもたらすことが期待できる」と、中国が欧米諸国に先駆けて、世界の復興に向けて進み始めていると訴えた。

 賈氏は、債務返済が困難な国を、国際通貨基金(IMF)などが救済することを主張する。

 しかし、米フィラデルフィアの外交政策研究所上級研究員フェリックス・チャン氏はこのような見方を否定、IMFや世銀が容易に「債務の再編や資金援助などに応じることはない」と主張する。

 「最低でも、中国への債務の内容、条件を開示するよう求めるべきだ。国際社会が、中国の一帯一路を意図せず救済するようなことはない」と、不透明な中国の合意内容の公開を求めた。

(ワシントン・タイムズ特約)