米大統領選、中国問題が主要争点に
11月の米大統領選で、中国問題が主要争点として浮上している。中国が新型コロナウイルスの初期対応で隠蔽(いんぺい)を図り、感染拡大させたことに対する有権者の反発が高まっていることが背景にある。トランプ大統領と民主党候補指名を確実にしたバイデン前副大統領の両陣営で、互いの対中姿勢が「弱腰」だとする非難の応酬が始まっている。(ワシントン・山崎洋介)
トランプ、バイデン両氏が応酬
新型コロナで世論硬化
「バイデンは中国の味方だ」トランプ陣営は今月、バイデン氏と中国の関係に照準を定め、上院議員時代を含め40年以上、中国に「弱腰」だったとする広告キャンペーンを開始した。
9日に発表した動画広告で、トランプ政権が1月に導入した中国からの入国禁止措置をめぐり、バイデン氏が「ヒステリックな外国人排斥」などと非難したことを指摘。息子ハンター氏と中国の金銭的な結び付きや、副大統領時代に「中国が台頭することは良いことだ」と言った発言を取り上げ、中国との親密さを印象付けている。
これに続いて、トランプ氏を支持する政治活動団体「アメリカ・ファースト・アクション」は17日、「北京バイデンシリーズ」と称する一連のテレビ広告を、接戦が予想されるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州で流し始めた。このCMでは、バイデン氏をはじめとする「ワシントンのエリート」が中国の台頭に手を貸したと非難し、「中国を止めるにはジョー・バイデンを止めなければならない」などと訴えている。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターが今月発表した世論調査によると、90%以上の米国人が中国の「権力と影響力」を米国に対する脅威とみている。また、中国を好ましく思わない人は、66%と過去最高を記録。このうち共和党支持者は72%、民主党支持者は62%と、党派を超えて高い数字だった。
米国では近年、知的財産窃盗や合成オピオイド「フェンタニル」の流入問題などで中国への反感が高まっていたが、それが新型コロナの感染拡大によって、さらに増幅されている。
トランプ氏にとって再選への最大の武器だった好調な経済は新型コロナによって吹き飛び、また対応の遅れが感染拡大を招いたとしてメディアや野党からの厳しい批判にさらされている。こうした中、トランプ氏は会見で「私ほど中国に強硬な大統領はいなかった」とアピールしつつ、バイデン氏についてはツイッターで中国にとって「夢のような候補だ」と皮肉るなど、中国問題を再選の追い風にしようしている。
一方、バイデン氏側は、19日に発表したネット広告で、「真実を隠すために、ネガティブキャンペーンを実施している」と反撃を開始。トランプ氏こそ「中国に言いくるめられた」と批判した。
中国の新型コロナ対応について、トランプ氏がその「透明性」などを評価する発言を取り上げ、「トランプ氏は1~2月の間に中国を15回たたえた」と指摘。トランプ氏が当初示していた中国への配慮が対応の遅れを招いたと強調している。
こうした「どちらが中国に弱腰か」をめぐる非難合戦は、党派を超えて有権者の間に反中感情が広がっていることを反映している。
ただ、バイデン氏は、この広告について、民主党の支持基盤であるリベラル派の一部から「人種差別的」などと批判を浴びている。バイデン氏は今後、こうした声と強硬論とのバランスを取ることも求められる。
トランプ氏は、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から流出した可能性を調査するとともに、中国に損害賠償を請求する可能性も示唆している。今後、トランプ政権の対中国政策がどう展開するかも大統領選の行方を大きく左右しそうだ。







