救急隊員を追悼するサイレン音
地球だより
南米最多の新型コロナウイルス感染者を抱えるブラジル。27日時点で6万人以上が感染し、最近では1日3000人以上増え続ける数字に驚くこともなくなった。
特に感染者が集中しているのが、ブラジル経済の要であるサンパウロ州だ。同州では2万人を超える感染者が出ているが、実際の数字はその数倍といわれており、最大限の注意を払って生活を送っているのが現状だ。
そんな中、ある動画を目にした。消防本部の前に救急車や消防車が集まり、サイレンを鳴らして亡くなった同僚を追悼している様子だった。亡くなったのは、サンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス市(通称モジ市、人口37万人)の51歳の救急隊員で、コロナウイルスに感染していたのだという。
すでに定年退職が決まっていたが(警察官や救急隊員の定年は50歳の場合が多い)、コロナ禍で医療関係者の人材が足らず、事態が落ち着くまで退職を延期していたのだという。
モジ市では、感染者の多くが医療従事者で、看護師や救急隊員は常に危険と向き合いながら戦っている。看護師の中には、家族への感染を防ぐために1カ月以上も自宅に帰らず、家族と会っていないという人もいる。
多くの自治体が外出禁止令や商業活動停止などを導入して、医療崩壊を防ごうとしている。自粛疲れが出てくる中で「自分くらい」という思いが、誰かの命を奪うことにつながりかねない。
映像の中で鳴り響く救急車のサイレン音を聞きながら、亡くなった救急隊員に黙祷(もくとう)をささげた。
(S)