米民主党候補選、一本化長引けば党内に亀裂も
米大統領選の民主党候補指名争いは、序盤の天王山となる「スーパーチューズデー」で、中道派のバイデン前副大統領が息を吹き返し、急進左派のサンダース上院議員と互角に渡り合う選挙戦に持ち込んだと言える。
バイデン氏が巻き返す
スーパーチューズデーでは、予備選・党員集会が14州・1地域で一斉に実施され、バイデン氏は南部テキサス州など10州、サンダース氏は西部カリフォルニア州など4州で勝利した。
事前調査では、多くの州でサンダース氏が優位に立っていたが、スーパーチューズデーを目前に控え、中道派の最若手のブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長が急遽(きゅうきょ)撤退を表明した。
ブティジェッジ氏は「多くの米国民を置き去りにする、柔軟性のない、イデオロギー的な革命を信じている」とサンダース氏を批判してきた。戦いを続ければサンダース氏を利することになるとの認識だ。
クロブシャー上院議員も撤退し、ブティジェッジ氏と共にバイデン氏への支持を表明した。穏健派支持層の票が集約されたことが、バイデン氏の巻き返しにつながった。
スーパーチューズデーから本格的に参戦した中道派の大富豪ブルームバーグ前ニューヨーク市長は、米領サモアを制したが伸び悩み、撤退を表明。「バイデン氏を次の大統領にするために一緒に取り組もう」と、バイデン氏への支持を呼び掛けた。
しかし緒戦の躓(つまず)きによるバイデン氏へのネガティブ報道も多く、ここから一気呵成(かせい)に進むかどうかは微妙なところ。息子の国際ビジネスをめぐっても、疑惑には事欠かない。
サンダース氏は一貫して「格差を是正しなければならない」と主張してきた。2月29日の南部サウスカロライナ州予備選では苦戦したものの、その勢いは止まらない。公約の目玉として「国民皆保険の実現」「民間医療保険の廃止」「学生ローンの免除」「気候変動対策」「富裕税の導入」などを掲げている。長年にわたり資本主義と大企業を声高に批判してきた人物が、世界で最も影響力を持つ米大統領になる可能性があるわけだ。
トランプ大統領は2月の一般教書演説で「社会主義によって米国の医療保険制度が破壊されるのを絶対に許してはならない」と訴えた。民主党の地盤であるカリフォルニア州など不法移民に寛容な「聖域都市」は間違っているとも語った。民主党候補との明確な相違を有権者に示した形だ。
いずれにせよ、民主党予備選は長期化しそうだ。獲得代議員数は米国時間4日夜の時点で、バイデン氏が509人でサンダース氏は449人。その差はそれほど大きくない。代議員数の過半数1991人に届くのはしばらく先のことになる。このままいくと、7月の党大会まで候補者が決まらないというシナリオも無視できなくなってきた。
本選に悪影響及ぼす
サンダース氏とバイデン氏による一騎討ちの構図が固まったとはいえ、一本化に時間を要すれば民主党内に亀裂が残り、その後の本選に悪影響を及ぼすことは言うまでもないだろう。