特措法改正へ、早急な成立へ審議を急げ
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための新型インフルエンザ対策特別措置法改正案が来週にも成立する。可能な限り早急な成立を求めたい。
外出制限などが可能
2012年成立の特措法は、09年に新型インフルエンザが流行した際、イベント自粛などをめぐって自治体ごとに対応が異なったため混乱を招いたことから制定された。首相が「緊急事態」を宣言すれば、対象地域で住民の外出や集会を制限できるほか、病床を確保するための土地収用なども可能になる。こうした私権制限は、感染拡大を防ぐためにはやむを得ない。
特措法の対象は①新型インフルエンザ②過去に世界的に流行した再興型インフルエンザ③未知の新感染症――で、政府は新型ウイルスに適用するには法改正が必要との立場だ。しかし、専門家からは現行法でも適用は可能だとの意見が出ている。新型ウイルスへの対処は一刻を争う。本来であれば、現行法をすぐに適用すべきだろう。
国内の感染者は、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員を含め1000人を超え、現在も増え続けている。死者も12人に達した。感染拡大防止のため、11日の予定だった政府主催の東日本大震災追悼式の中止も決まった。中国と韓国からの入国者全員を2週間隔離することを決めるなど水際対策も大幅に強化した。
官民の協力で感染を封じ込めなければならない。政府は13日にも特措法改正案を成立させる方針だが、もっと早められないか。国会は土日の休みを返上してでも審議を急ぐ必要がある。
安倍晋三首相は野党5党の党首らと個別に会談し、特措法改正に向けて協力を要請した。立憲民主党の枝野幸男代表は、特措法は新型ウイルスにそのまま適用できるとの野党側の解釈を説明しつつ「審議を急いでやることには協力する」と表明。協力の条件として安易な緊急事態宣言は避け、国会で質疑時間を十分確保するよう要求した。与野党が協力するのは当然だが、枝野氏には首相の権限行使に対する警戒心も見て取れる。
野党は、首相が全国の小中高校などに臨時休校を要請した際に「準備不足」などと批判した。しかし、首相には機動的な対応が求められる。
首相が緊急事態を宣言するには①国民の生命や健康に著しく重大な被害を与える恐れがある②全国的かつ急速な蔓延で国民生活や経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある――という二つの要件を満たす必要がある。もっとも危機管理の要諦は「巧遅は拙速に如かず」で、早めの宣言もためらうべきではない。野党も党利党略による批判は控えなければならない。
改憲への道筋整えよ
特措法改正とは別に、国会では憲法改正による緊急事態条項の創設についても論議を進めてほしい。この条項があれば、感染症にも特措法ではなく恒久法で速やかに対処できるはずだ。
新型ウイルス対策を、改憲論議停滞の言い訳にすることは許されない。むしろ、このような時こそ現行憲法の欠陥を指摘し、改憲への道筋を整えていくことが求められよう。