サンダース氏の躍進受け「社会主義」批判前面に、米保守派の年次集会 CPAC
米保守派の年次集会「保守政治行動会議(CPAC)」が先月26から29日までワシントン近郊で開かれた。民主党の大統領候補指名争いで「民主社会主義者」を自称するサンダース上院議員が勢いを見せるなど、米国の急進左派勢力が台頭する中、今年のCPACは「アメリカ対社会主義」をメインテーマとして設定。出席したトランプ大統領ら登壇者は相次いで「社会主義」批判を展開した。(ワシントン・山崎洋介)
若年層の支持拡大に警戒
「極左の過激派は、米国を非常に素早く大型のベネズエラに変える政策を実施するだろう」。最終日に熱狂的な聴衆に迎えられたトランプ氏は、社会主義を採用して破綻状態に陥った南米ベネズエラを引き合いに出し、左派勢力の台頭に警鐘を鳴らした。
トランプ氏は、民主党の候補指名争いをするバイデン前副大統領とブルームバーグ前ニューヨーク市長をそれぞれ「眠たいジョー」「ちびのマイク」などと揶揄(やゆ)する一方、指名を獲得するのは「おそらくクレイジー・バーニー(サンダース氏)になるだろう」と予想。「彼は共産主義者との疑いもあるが、間違いなく急進的な左翼の社会主義者だ」と断じた。
トランプ氏は最近、こうした社会主義批判を繰り返している。サンダース氏ら急進左派が若者を中心に支持を広げることへの警戒感と共に、民主党の左傾化を印象付け、再選に向け保守派を結束させる狙いがある。
今年のCPACは、メインテーマに沿って「社会主義―国家と社会の破壊者」「社会主義の阻止―米国をハイジャックする社会主義者の陰謀を暴き打ち負かす」などと題した討論会を開くなど、「反社会主義」の姿勢を前面に出した。
CPAC主催団体「米国保守同盟」のマット・シュラップ会長は、「アメリカ対社会主義」とした今回のメインテーマについて、「社会主義は単なる経済の問題ではない。だから『資本主義対社会主義』とはしなかった」と説明。「社会主義は神が権利を与えた個々の人間の尊厳を侵害するという核心に至る問題だ」と訴え、伝統的な米国の価値観を守る必要性を強調した。
一方、11月の選挙で多数派奪還を目指す共和党下院議員らは、サンダース氏を標的にした。同党下院院内幹事のスティーブ・スカリーズ議員は、サンダース氏らが提唱する「メディケア・フォー・オール」について、「彼らの計画では、1億8000万人の米国人が加入している民間保険を取り除く。彼らにあなたの健康管理の選択肢を奪うことを許していいのか」と呼び掛けた。
保守派の間には、サンダース氏が民主党候補となった場合、トランプ氏が大勝するとの見方が多い。若い世代の間で社会主義を支持する傾向が強まっているものの、米全体では依然、社会主義への警戒感が根強くあり、穏健・無党派層を遠ざけることが予想されるからだ。
しかし、そうした見方を戒める声も上がった。保守系学生団体「ターニングポイントUSA」の創設者チャーリー・カーク氏は、サンダース氏が「勝つ可能性がある」と指摘した。「この部屋にいるすべての保守派活動家は、あざけりや冷やかしを排除し、非常に深刻に捉えるべきだ」と警告した。
カーク氏は「大学では、若者にマルクス主義思想などを教育している。こうした大学生が無限に供給され、サンダース氏の支持基盤となっている」と述べ、サンダース氏がトランプ氏にとって手ごわい相手になり得ることを強調した。
CPACでは、「トランプ氏の再選に最も脅威となる候補」について参加者による投票が行われ、サンダース氏が34%でトップだった。続いてブルームバーグ氏が23%、バイデン氏が9%だった。