英が5Gでファーウェイ製品容認、米議会が超党派で反発

 英国が先月28日、次世代通信規格「5G」網に中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)製品の採用を一部認める判断を下したことに、超党派の米議員から非難の声が相次いだ。米国で中国によるスパイ行為や重要インフラへのサイバー攻撃への懸念が高まる中、「特別な関係」とされる英国との温度差を浮き彫りにしている。(ワシントン・山崎洋介)

情報共有への懸念広がる

 米国はファーウェイは企業秘密の窃盗の疑いがある上に中国政府との関係が深いなどとして、同盟国にファーウェイ製品の完全排除を繰り返し求めてきた。同盟国が同社製の5G通信網を導入すれば、情報共有や共同軍事作戦に深刻な影響を及ぼす恐れがあるからだ。

ファーウェイ

中国北京にあるファーウェイの店舗(UPI)

 米国は、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドと情報機関の情報を共有する同盟「ファイブアイズ」を構成しているが、このうちオーストラリアとニュージーランドは、すでに5G通信網でファーウェイ製品の利用を禁じることを決定している。こうした中、今回の英国の「離反」は、冷戦初期から続く5カ国の連携にくさびを打たれた形となり、米国にとって大きな打撃となった。

 共和党のベン・サス上院議員は声明で今回の決定について、「悲しい現実だが、英国がファーウェイにいる監視国家の共産党員を受け入れた今、われわれの『特別な関係』はそこまで特別ではなくなった」と嘆いた。その上で「中国共産党はファーウェイを通してファイブアイズを感染させた」として今後の情報共有に懸念を示した。

 対中強硬派として知られる共和党のトム・コットン上院議員も「ファーウェイに5G通信網を構築させることは、冷戦中にソ連国家保安委員会(KGB)に電話通信網を構築させるようなものだ。短期的な費用の削減は、長期的な損失に見合うものではない」と警告した。同党のマルコ・ルビオ、ジョン・コーニン両上院議員と共に、今回の決定を受け、マグワイア国家情報長官代行に英国との情報共有について再検証するよう求めた。

 また共和党のジム・バンクス下院議員は「英国は途方もない間違いを犯した」と主張。通信網にファーウェイ製の機器を使用するすべての国との情報共有を禁ずる法案を提出した。

 民主党議員からも懸念の声が上がった。米上院情報特別委員会のマーク・ワーナー副委員長は声明で「英国の決定に失望した。特に安全保障上のリスクは明白だからだ」と指摘した。

 一方、訪英したポンペオ国務長官はロンドンで開かれた討論会で先月30日、「ファイブアイズの関係は深く強いものであり、今後も続く」としつつ、「米国は決して、信頼できない通信網で安全保障に関する情報を共有するのを認めない」と表明。「われわれのシステムのどこかにファーウェイ製品を導入すれば、リスクを緩和することは極めて困難だ」とも述べるなど、抑制的ながらも強い懸念を表明した。

 米メディアからは、英国の翻意を強く促すべきだとの声も上がっている。ナショナル・レビュー誌は社説で、英国は自国の主権を回復することを理由に欧州連合(EU)からの離脱を決めたが、今回の決定により「ジョンソン首相は、EUの官僚への服従を中国の党官僚による専制政治への服従へと交換するリスクを負うことになった」と指摘。英国が基盤インフラの整備で中国企業と関係を深めるほど、そこから抜け出すことが難しくなるとして「トランプ政権は、貿易関係などあらゆる手段を使用して、英国に決定の再考を促すべきだ」と主張した。