米軍のアジアシフト困難に、中東・アフリカ情勢が緊迫


 中東での緊張の高まりを受けて、中国との「大国間競争」に集中するという米国の国防戦略が見直しを迫られている。専門家らは、米軍は間もなく、中東とアジアのどちらかの選択を求められることになると指摘する。

 テロとの戦いから、台頭する新興国への対応へとシフトすることは、2018年に当時のマティス国防長官がまとめさせた「国家防衛戦略」の根幹をなしている。

 エスパー現国防長官は14日、攻勢を強める中国に対抗するため、アフリカ、中東などからの撤収と、太平洋地域への再配備を進める意向を表明した。しかし、イラン情勢などの緊張の高まりで、中東での軍事的プレゼンスを縮小するというトランプ政権の計画は後退を余儀なくされている。

 米軍のアジアシフトが遅れる中、中国とロシアは国防予算を増額し、極超音速兵器などの先進兵器の開発を推進している。また、同盟国サウジアラビア、イスラエルは、アジアへのシフトの方針にいら立っており、欧州各国からも時期尚早との見方が出ている。

 フランスのマクロン大統領は13日、過激派組織「イスラム国」(IS)などテロ組織がアフリカ中部で攻撃を強化し、支配地を拡大していると指摘、米軍の縮小は「われわれにとって悪い知らせだ」と述べている。

 シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問マーク・キャンシャン氏は、「根本的な緊張」が新戦略の実施を阻んでいると指摘、「中東からの撤収、または関与の大幅縮小を前提とした戦略が立てられているが、逆のことが起きている。関与を維持し、それどころか強化している」と指摘した。

 イランの精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害による緊張の高まりを受けて、米国は中東への3500人の増派を決めたばかりだ。

 トランプ大統領はアフガニスタンからの撤収の意向も表明しているが、反政府組織タリバンとの直接交渉は暗礁に乗り上げ、撤収は進んでいない。

 専門家らは、米国の選択肢は限られていると指摘する。ISが復活したり、イランとの戦争の危機に直面したりするようなことになれば、米軍は地上軍の派遣を余儀なくされる。

 キャンシャン氏は「この難問から脱する唯一の方法は、海外への関与を縮小することだ。しかし、その場合、超大国が友好国への支援を強化することが考えられる。対応は非常に難しい」と述べた。

(ワシントン・タイムズ特約)