トランプ米大統領、軍事力行使に言及せず


紛争回避しイランに圧力

 イランによるイラクの米軍駐留基地へのミサイル攻撃を受け、トランプ米大統領は8日、ホワイトハウスで演説し、米国人に死傷者は出なかったと発表。イランはさらなる攻撃を「抑制しているようだ」との見方を示し、軍事力の行使については否定的な考えを示した。追加の経済制裁を科す意向を示す一方、対話に前向きな姿勢を示すなど、硬軟両様でイランに核計画の放棄を求める立場を示した。

「米の二重の勝利」の声も

 トランプ氏は「われわれは死傷者を出さず、軍事基地では最小限の損害しか受けなかった」と説明。イランがさらなる攻撃をする可能性が低いとの認識を示した上で、「われわれは素晴らしい軍隊を持っているが、使いたくはない」と述べ、軍事力行使には慎重な考えを示した。

トランプ米大統領

8日、ホワイトハウスで演説するトランプ米大統領(中央)(AFP時事)

 これにより、イランとの大規模な紛争はひとまず回避された形となった。

 トランプ政権はこれまで、米国人に死傷者が出た場合、反撃する立場を明確にしていた。今回の攻撃は、イラン側が米国との対立激化を避けるため、意図的に米国人に被害が出ない場所を狙ったとの見方もある。

 トランプ氏は演説の冒頭で、「私が米国の大統領である限り、イランが核兵器を持つことは許されない」と改めて明言。追加の経済制裁を科す意向を示し、「イランの態度が変わるまで強力な制裁を継続するだろう」と強調した。

 トランプ氏はまたイランの国民や指導者に向け、「われわれは平和を求めるすべての人と平和を信奉する準備ができている」として、対話による解決を呼び掛けた。

 2015年のイラン核合意については、「非常に欠陥があり、イランに核兵器への迅速かつ確実な道を開く」と指摘し、関係国に核合意からの離脱を呼び掛けた。

 米専門家の間には、ソレイマニ司令官の殺害をめぐる一連の対立で米側が政治的に「勝利」したとする声も上がる。

 米シンクタンク、ハドソン研究所のマイケル・プレジェント上級研究員は、米国人の死傷者を出さなかった今回のイランの攻撃について「米国の力を恐れ、軍事的対立を望んでいないことを示している」と分析。

 米国にとっては、「数多くの米国人の命を奪ったテロリストであるソレイマニ司令官を排除しつつ、その殺害によってイランに強い警告を与えるという二重の勝利となった」と指摘した。

(ワシントン 山崎洋介)