防衛産業基盤強化に取り組む米政権、ドローン国産化を促進
トランプ米政権は、スパイやサイバー攻撃など安全保障上の懸念がある中国製ドローンの排除を進めるとともに、こうした小型無人機の国内産業基盤の立て直しを図っている。現在、市場で高いシェアを占める中国に対抗し、国産化を促進する考えだ。
(ワシントン・山崎洋介)
中国企業の市場支配に対抗
「ドローンの分野で経済や安全保障のために行動を起こすことはトランプ政権にとって急務だ」
対中強硬派として知られるピーター・ナバロ大統領補佐官は先月28日、FOXニュース(電子版)への寄稿でこう強調し、国内のドローン生産能力向上が必要だと訴えた。
米国では、安全保障上の懸念から中国製ドローンの使用を見直す動きが進んでいる。
内務省は昨年10月、保有する800以上の中国製もしくはその部品が含まれるドローンの使用を停止し、調査すると発表。同省はこれまで、こうしたドローンを森林火災への対応やダムと洪水の監視、環境被害の検査など幅広い分野に使用してきたが、今後は中国から調達しないことを決めた。
軍事面では、陸軍は2017年に重要インフラのデータなどを中国政府に提供したとして、中国企業で業界最大手のDJI製ドローンの使用を禁止。その後、昨年末に成立した2020年度国防権限法は、国防目的での中国製ドローンの購入を禁止した。
民間企業への統制を強める最近の中国の動きが、中国製ドローンに対する米国の警戒感を高める一因となっている。特に、中国は2017年6月に施行された国家情報法ですべての個人や団体に国家の諜報(ちょうほう)活動への協力を義務付けたことが、情報が中国政府に筒抜けになるリスクを際立たせている。
CNNによると、米国土安全保障省は昨年5月、中国製ドローンについて、「飛行情報が中国メーカーに送信されている可能性がある」と指摘。こうしたデータが中国政府に提供される懸念があるとして、関係機関に警戒を呼び掛けた。
DJIは世界のドローン市場の7割、北米では8割以上を占めるとされる。このため、米国の政府機関は近年、DJIのドローンへの依存を強めてきた。
しかし、ナバロ氏は、こうしたDJIによるドローン市場の席巻は「中国の経済的侵略の最新事例」だと主張する。つまり、DJIは補助金で支えられた低価格製品を市場に大量に送り込むなどの「不公正な貿易慣行」によって、競合他社を弱体化させ、市場優位性を確立。その結果、米国で最も有望なドローン・メーカーの一つである「3Dロボティックス」は、生産の停止を余儀なくされたという。
こうした中国メーカーによる市場支配に対抗し、米国内のドローンの産業基盤を立て直すため、トランプ大統領は昨年6月、ドローンの国内生産能力を強化する大統領決定を発表。国防総省は同11月、「信頼できる資本市場」プロジェクトを始動し、革新的な小型無人機技術を持つハイテク企業と精査された優良投資家の橋渡しをする取り組みに乗り出した。
トランプ政権は、米軍の優位性を維持するために防衛産業基盤の強化に取り組んでおり、ドローンの国産化もその一環だ。ナバロ氏は「米国が世界で最も優れた無人航空機システムを製造する能力を回復することは国家安全保障のためだけでなく、経済的繁栄をもたらす」と意欲を示しており、今後さらなるテコ入れも予想される。