香港人権法案 トランプ氏は早急に署名を
米議会は、香港の自治と人権を擁護するための「香港人権・民主主義法案」を可決した。
トランプ米大統領は、この法案に早急に署名して成立させ、香港の高度な自治を守る姿勢を強めるべきだ。
中国の介入への牽制狙う
法案は「一国二制度」に基づく香港の自治が機能しているかどうか米政府に毎年検証を求めるとともに、人権侵害に関わった中国政府関係者への制裁を可能にする内容。香港警察とデモ隊の衝突への中国の介入を牽制(けんせい)する狙いがある。
下院は10月、同様の内容の別の法案を可決していた。上下両院の法案を一本化する調整も検討されたが、早期成立を優先させ、上院の法案をそのまま通過させた。両院はまた、催涙ガスやゴム弾、スタンガンなどの香港への輸出を禁止する法案も可決した。成立すれば、中国政府への大きな圧力となろう。
この法案について、中国の王毅外相はコーエン元米国防長官との北京での会談で「断固反対だ。香港の繁栄と安定、一国二制度を破壊するたくらみ通りになることを断じて許さない」と表明した。
中国の習近平国家主席は、一国二制度について「一国」を「二制度」よりも優先する姿勢を示している。だが、これは高度な自治など香港返還の基礎を定めた1984年の英中共同声明に反するものだ。一国二制度を骨抜きにしているのは中国の方だと言えよう。
香港の高等法院(高裁)は、デモ隊の覆面を禁じる規則について「基本的権利の制限に関し、合理的な必要を超えている」と指摘し、憲法に相当する香港基本法に「違反している」と初の判断を下した。
一国二制度は司法にも高度な自治を認めているはずだが、中国政府は「(基本法の解釈権を持つ)全国人民代表大会(全人代)常務委員会の権威と香港行政長官の統治権に公然と挑戦するものだ」と批判。基本法の解釈権は中央にあることを改めて強調した。今回の米国の法案が成立することで、こうした中国の横暴が抑え込まれることを期待したい。
香港のデモでは、香港理工大に多くの学生が籠城して香港政府に抗議した。現在も一部の学生が立てこもりを続けている。こうした中、中国政府は香港警察トップに2014年の「雨傘運動」にも携わった強硬派を充てる人事を発表した。普通選挙実施などのデモ隊の要求に耳を傾けず、力で抑え込もうとするのであれば容認できない。
一方、デモ隊の側にも自制が求められる。どのような理由があるとしても、鉄道線路に火炎瓶を投げ込む交通妨害などの過激な行動に走ってはなるまい。これでは、香港市民や国際社会の共感を得ることはできないだろう。
区議選で民意示したい
香港では24日に区議会(地方議会)選が行われるが、民主派が有利とみられている。
インターネット上では「過激な行動を控えよう」と呼び掛けられている。警察に拘束されてしまうと、投票に行けなくなるからだ。直接選挙の区議選で民意を示したい。