北朝鮮を擁護するロシア
「対話」を主張し影響拡大
「原爆保有」聞いたプーチン氏
ロシアのプーチン大統領は4日、モスクワで開かれたエネルギーフォーラムで演説し、北朝鮮が原爆を保有していると、2000年初め頃に当時の金正日総書記から直接伝えられたことを明らかにした。「対話による核問題解決」を主張するロシアは、北朝鮮の現体制を存続させることで、韓半島・北東アジアへの影響力を拡大する構えだ。
(モスクワ支局)
北朝鮮の核開発は1950年代に遡(さかのぼ)る。当時の北朝鮮はソ連の影響下にあり、ソ連の核研究所に参加して核関連技術を習得した。北朝鮮はソ連の要請で85年、核拡散防止条約(NPT)に加盟したが、秘密裏に核開発を継続していた。ソ連は北朝鮮を中国に接近させないため、一定の技術支援を行っていたとされるなど、北朝鮮の核開発には密接に関連していた。
ソ連崩壊後の90年代には、北朝鮮は闇市場から技術を入手し、核開発を進めていたとみられている。北朝鮮が7月に打ち上げた大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジンが、ロシアが使用していたものと酷似しており、エンジンがロシアやウクライナから流出した可能性も指摘されている。
が、プーチン大統領は一貫して「対話による北朝鮮の核開発問題解決」を主張し、北朝鮮に制裁などの圧力をかけようとする米国など国際社会を批判している。プーチン大統領は今年6月、米国が北朝鮮に対し、軍事的圧力を高めようとしていることを念頭に「小国は核兵器を持つ以外に、独立と安全を守る方法がない」などと発言し、北朝鮮を擁護するかの姿勢を示した。

北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)装着用の「水爆」実験に関する金正恩朝鮮労働党委員長の自筆命令。「承認する。9月3日昼12時に断行すること。金正恩2017 9 3」と書かれている(朝鮮通信 時事)
また、9月には「北朝鮮は雑草を食べることになったとしても、自国の安全が保障されない限り(核開発)計画をやめない」と述べ、さらに、ロシア制裁を行う米国が、北朝鮮制裁でロシアに協力を求めたことを「ばかげている」と批判し、制裁に同調しない姿勢を改めて明確にした。
今月4日にモスクワで行われたエネルギーフォーラムでは、「(2000年頃に)日本に行く途中、北朝鮮に立ち寄った。今の指導者の父(金正日総書記)と会ったが、彼は原爆を持っていると言った」と発言。
その上で、「北朝鮮と力による対話を試みることは、北朝鮮の政権を強化するだけに終わる」「米国と北朝鮮、そして地域の国々と北朝鮮が直接対話する方法でのみ、バランスの取れた、受け入れ可能な解決策を見いだすことができる。それ以外の方法は極めて危険な行き止まりの道である」と主張した。
また、「北朝鮮に対する全面攻撃が可能だというが、北朝鮮の武装解除という目的を達成することは恐らくないだろう。なぜなら、誰も(北朝鮮で)何がどこに存在するのか知らないからだ。それを100%知っている者はいない。北朝鮮は閉鎖国家だからだ」と、軍事力行使をけん制している。
ソ連崩壊後ロシアは、韓国にすり寄り、北朝鮮との関係を冷却化させた。プーチン政権になり北朝鮮との関係修復に動いたが、北朝鮮は中国と密接な関係を築き、ロシアの国力低下という事情もあり、失地回復には至らなかった。
そのロシアは、韓半島の南北統一を支持する姿勢を打ち出すことで韓国、北朝鮮双方に接近し、韓半島への影響力回復を試みてきた。韓半島に対し、米国、中国と同等の影響力を得ることが目的である。
ロシアから北朝鮮を経由し韓国に至る南北縦貫鉄道計画や、北朝鮮を経由してロシアから韓国に至るガスパイプライン計画も、その一環である。特にガスパイプラインについては、旧ソ連時代の北朝鮮の債務約100億ドルを免除することで、計画を推し進める構えだ。
ロシアにとっては、米国がインドやパキスタン、イスラエルの核開発については制裁を科さない一方で、北朝鮮には軍事行使も辞さない姿勢がダブルスタンダードに映る。ロシアが影響力を拡大する上で、極めて重要な位置にある北朝鮮の現体制を存続させるため、さまざまな方法で北朝鮮を援護していく構えだ。