中露、戦略パートナー関係を強化

 ロシアのプーチン大統領は4日、モスクワのクレムリンで、中国の習近平主席と会談した。両首脳はこれまで両国が築き上げてきた中露の包括的・戦略的パートナーシップを一層強化するとともに、東アジア地域での米国の影響力拡大に、共同で対抗する立場を明確にした。
(モスクワ支局)

THAAD配備に反対表明
アジアでの米影響力拡大に対抗

 習主席のロシア訪問は今回で6回目。プーチン大統領との会談は21回目となる。プーチン大統領は習主席との会談を「今年の中心的な出来事」と形容した。さらに、中露民族の友好関係を確固たるものとしたことをたたえ、習主席にロシア最高勲章である「聖アンドレイ勲章」を授与した。

習近平氏(左)とプーチン氏

4日、モスクワで握手する中国の習近平国家主席(左)とロシアのプーチン大統領(AFP=時事)

 授与式でプーチン大統領は「中国国民に対し、ロシア国民が心からの友情を感じていることの証である」と語り、これに対し習主席は「中露の戦略的パートナーシップは、歴史上で最も良い時代を迎えている」と応えた。

 モスクワでの交渉で中露は、原子力や航空機産業、石油採掘や天然ガスの輸出など40件、総額で100億ドル以上の契約に調印した。さらに、文化交流やメディア協力などの拡大でもいくつかの合意を行った。

 無論、中露の戦略的パートナーシップの目的は、経済分野に限ったものではなく、米国への対抗軸の形成が最大の目的の一つである。今回の首脳会談は、北朝鮮や南シナ海、アラビア半島やシリア、ウクライナ東部などで緊張が続く中で行われたものであり、特に、東アジアでの米国の影響力拡大に、両国が共同で対抗することを確認したものとなった。

 両首脳は、米国が韓国に配備を進める高高度防衛ミサイル(THAAD)について、地域の戦略バランスを崩すものとして断固反対すると改めて表明した。

 中露両国はTHAADについて、中露が保有する大陸間弾道弾を迎撃するだけでなく、迎撃ミサイルの弾頭を速やかに核弾頭に換装することが可能な攻撃兵器であり、中露の脅威となると反発している。

 THAADの射程には、ロシア極東ウラジオストクからバイカル湖にかけての東シベリア地域やカムチャツカ半島、中国の北京や上海が含まれる。両首脳はTHAADに反対する一方で、北朝鮮の核問題は、国際社会との対話を通じての解決を目指すことで合意した。

 ロシアによるウクライナのクリミア併合について中国は、積極的にロシアを支持することは避けている。しかし、欧米などによる対露制裁には加わらず、ロシアのクリミア編入を無効とする国連安保理や国連総会の決議でも棄権を選択した。国際社会で孤立するロシアは中国に深い恩義を感じており、2014年には長年の懸案であった中国への天然ガス売却に関する大型契約に調印した経緯がある。

 中国は、米国からの圧力が高まる中で、クリミア問題でも一歩踏み出し、ロシアに一層接近する姿勢も見せつつある。

 米国のトランプ政権にとって、北朝鮮の核問題の解決とともに、対中貿易赤字の削減は極めて大きな課題である。今年4月の米中首脳会談で、中国は、米国の対中貿易赤字を削減するために「100日計画」を作り、協力を進めることで合意した。

 一方で、米国は3日、中国が実効支配する南シナ海・西沙諸島の中建(トリトン)島から12カイリ(約22キロ)内の海域で、ミサイル駆逐艦「ステザム」を航行させ、中国の神経を逆なでした。

 このような状況下で行われた今回の中露首脳会談で、中国がロシアとの関係強化をことさら強調したのは偶然ではない。

 一方のプーチン大統領は、この中露の関係強化という追い風を背景に、ドイツ・ハンブルクで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議の会期中の7日、トランプ大統領との初の首脳会談に臨んだ。

 会談は予定されていた時間の約2倍になる2時間15分にわたって行われ、内戦が続くシリア南西部での停戦実施などで合意した。ロシアによる米大統領選の介入疑惑や、北朝鮮の核問題で隔たりは依然として多きものの、「史上最悪レベル」(トランプ氏)の米露関係を改善する一歩を踏み出した形となった。