ロシア軍 極東にらみ増強
異例の演習公開
潜水艦基地や最新鋭艦も披露
ロシア国防省は10月下旬、時事通信など内外メディアに極東のカムチャツカやサハリン、ウラジオストク沖で行われた軍事演習の様子を公開した。海軍太平洋艦隊の潜水艦基地区域の立ち入りや最新鋭コルベット艦の乗船も許可するなど異例の公開ぶりで、アジア太平洋をにらむ極東のロシア軍の戦力の一端が明かされた。
▼潜水艦を追加配備へ
「近く新たに潜水艦4隻が配備される」。太平洋艦隊潜水艦部隊のアルカジー・ナワルスキー海軍少将は10月27日、カムチャツカ半島ビリュチンスクの基地に停泊したボレイ型原子力潜水艦「ウラジーミル・モノマフ」の艦上でこう語り、戦力拡充ぶりをアピールした。少将は「潜水艦部隊の活動目的は、アジア太平洋地域でのロシアの軍事的安全の確保だ」と強調。軍事インフラも絶え間なく改善されていると自信たっぷりに述べた。
半島南部の太平洋側に位置する基地には複数の潜水艦が停泊しており、この日は基地水域に侵入した敵艦艇の撃退を想定した訓練が行われた。入出域が管理されている基地区域には軍人やその家族向けにプールなどを備えた娯楽施設もあり、少将は「インフラ拡充や部隊の戦闘能力向上のほかに、国家指導部や国防省は軍人の生活の質向上に大きな関心を払っている」と説明した。
カムチャツカでは、ロシアが介入したシリア内戦にも投入された地対空ミサイルシステム「S400」による対空防御訓練も実施。実際に発射はしなかったが、発射台を動かしたり、訓練場所に煙幕を張ったりした。翌28日には北海道北方に位置するサハリン島での訓練を公開。島南部のアニワ湾沿岸で、無人機「エレロン3」やT80戦車などを投入して敵の上陸阻止訓練が行われた。
▼中国と軍事協力強化
欧米と対立を続けるロシアは、対米で結束する中国との軍事協力を深めており、アジア太平洋地域での軍事演習を活発化させている。中露は10月14日からウラジオストク沖の日本海で海上合同軍事演習を実施。そのまま中露軍艦10隻は津軽、大隅両海峡を通過し、23日まで日本周辺で「海上合同パトロール」を行った。航行は中露の連携を示し、日米をけん制する狙いがあったとみられている。
演習公開3日目の10月29日には津軽、大隅両海峡を通過した中露軍艦10隻のうちの1隻である太平洋艦隊のコルベット艦「アルダル・ツィデンジャポフ」に報道陣を乗せ、ウラジオストク沖の日本海で砲撃訓練などが行われた。同艦は昨年12月に配備された最新鋭艦で100ミリ砲や機関砲を備え、対潜哨戒ヘリコプターの発着艦が可能だ。
ロシアは毎年9月ごろに国内の軍管区の一つで大規模軍事演習を実施。来年は極東を管轄する東部軍管区で「ボストーク(東方)2022」が予定されており、国防省によれば、今回公開された訓練の一部は来年の大規模演習に向けた準備の一環でもあった。
18年に行われた前回のボストークには中国軍が参加した。30万人が動員され「冷戦後最大規模」とも言われた。来年のボストークも中露が軍事的結束を誇示する場となりそうだ。
(ウラジオストク時事)