ロシア ナワリヌイ氏、収容所で体調悪化
 ロシアの矯正労働収容所で懲役2年半の刑に服している反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏は、健康状態の悪化を訴えているが適切な治療を受けられていない。同氏は3月31日、治療を求めハンガーストライキに入った。一方で警察当局は、ナワリヌイ氏の治療を求め収容所を訪れた医師ら9人を拘束した。
(モスクワ支局)
治療を求めハンスト開始
看守が毎晩、睡眠妨害の「拷問」
昨年毒殺未遂に遭ったナワリヌイ氏は、療養先のドイツから帰国したところで、ロシアの治安当局に拘束された。モスクワの裁判所は2月20日、ナワリヌイ氏が過去に受けた有罪判決に関し、執行猶予を取り消し収監する判断を下した。
ロシアも管轄権を認める欧州人権裁判所が2月16日、ナワリヌイ氏を速やかに釈放するよう決定したにもかかわらずだ。
ナワリヌイ氏が収監されたのは、モスクワの東約100キロ、ウラジーミル州ポクロフにある第2矯正労働収容所だ。3月15日に明らかになった。
厳しい監視態勢で知られるこの収容所は1994年に開所し、かつては収監者に対する拷問の噂(うわさ)もあったが、現在のムハノフ所長の就任後、そのような行為はないとされる。特にナワリヌイ氏のような衆目を集める収監者に対し、直接的な暴力行為に及ぶことはないだろう。そう思われていたが、実際には、ナワリヌイ氏の置かれた状況は「拷問」に等しかった。
「健康状態が悪化している。背中がとても痛い。曲げることもできないし、真っすぐにもできない。ベッドから起き上がるのも大変で、とても痛む。(収容所当局に)訴えたが、対応しようとしない。収容所の医師が私を診て鎮痛薬を2錠渡したが、診断結果については何も知らされない」
「強い痛みが右脚に広がり、脚全体の感覚がほとんど失われた。歩行が困難で、右脚で支えようとすると転んでしまう。右脚を失いたくない」
「看守が毎晩、1時間ごとに大声で『有罪判決を受けたナワリヌイの記録を撮影する』と叫び、監視システムのスイッチを入れるため、そのたびに起こされる。事実上、睡眠を与えないという拷問を受けている」
ナワリヌイ氏が、接見した弁護士コブゼフ氏を通じて明らかにした内容だ。コブゼフ弁護士は次のように訴える。
「ただ単に治療しないというだけではない。ナワリヌイ氏の健康を損なうために意図的な戦略が実行されているのだ」
収容所当局は「必要とみられる医療的支援はすべて行っている」として、ナワリヌイ氏の主張を否定するが、状況に変化はないようだ。
ナワリヌイ氏は3月31日、治療を求めてハンガーストライキを開始した。健康状態がさらに悪化する恐れがあるが「他に闘争手段がない」と説明。「私は医師の診察を受け、薬をもらう権利がある」と訴える。
接見した弁護士ミハイロワ氏は4月1日、ナワリヌイ氏は収監されてから体重が13キロ減少していると明らかにした。
このような状況を受け6日、ナワリヌイ氏に適切な治療を受けさせるため、主治医ら15人が収容所を訪れ面会を求めたが拒否され、9人が警察に拘束された。現場で取材をしていたCNNの記者1人も拘束された。理由は「収容所の業務を妨害したため」という。
残念ながら、医師の訴えがナワリヌイ氏の状況を変えることはないだろう。権力に飼い慣らされた議会、電話で指示された評決を下す裁判所、無条件に上からの命令を実行する軍隊、治安機関、収容所―。それがロシアの現状であり、望みは国際社会の圧力だけだ。





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