ハリウッドに中国の検閲

「情報工作を助長」米国務長官、圧力への拒否要請

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 ポンぺオ米国務長官は12日、ハリウッドに対し、中国人観客へのアクセスと引き換えに米国映画を検閲する中国の圧力に抵抗するように強く促した。

 ニュースサイト「ワシントン・フリー・ビーコン」が入手したスピーチ原稿によると、ポンぺオ氏は米映画協会(MPAA)で行われた非公開の集会で、ハリウッドを米国の自由と創造性の象徴だと称賛。その一方で、MPAAの幹部に中国の検閲に屈しないよう求めた。

 中国は映画作品の内容を制限することでハリウッドの自由を蝕(むしば)んでいる。中国が外国映画の年間上映本数に上限を設ける中、各映画スタジオは、上映の承認を得るために競い合っている。

 最近の二つの映画のリメーク版は、米映画製作者が中国の検閲者の機嫌を取るために、台本をどのように変更するかを示している。

 映画『レッド・ドーン』はオリジナル版ではソ連とキューバが米国を侵略するという設定だったが、2012年のリメーク版では中国からの侵略に変えた。しかし、中国からの圧力を受け、制作会社「メトロ・ゴールドウィン・メイヤー」は、制作過程で侵略者を中国から北朝鮮に変更した。

ポンペオ米国務長官

ポンペオ米国務長官(UPI)

 より最近では、海軍の戦闘機パイロットが主役の映画『トップガン』の続編で、中国のライバルである台湾や日本の旗を示すジャケットのワッペンが消された。

 来年公開予定の『トップガン マーヴェリック』の予告編では、主演のトム・クルーズ氏は前作と同様にレザーボンバージャケットを着用している。しかし、ソーシャルメディアの投稿による指摘で、続編のジャケットには台湾と日本の旗が取り除かれていることが明らかになった。中国の検閲に媚(こ)びを売るためだと思われる。

 ポンペオ氏は、中国の検閲に屈することは中国の権威主義体制の真実を伝えることを妨げ、中国の情報工作やソフトパワー活動を助長することになると説明した。

 国務省は、米国の映画やテレビ番組への中国の影響について国民に注意を喚起することを計画している。また、中国がもたらす問題に対処するために、映画業界と協力したいと考えている。ポンペオ氏は、表現の自由の代表者というハリウッドの遺産に従って行動するよう促してスピーチを締めくくった。

 ヘリテージ財団のマイク・ゴンザレス上級研究員は、ハリウッドは中国市場へのアクセスを得るために、敏感なテーマを避けたり、検閲者に台本を提出したりしていると指摘。「中国は映画作品の公開を許可する条件として、中国共産党に反対する人物や考えを含めないことを要求する」と語った。

 従って、チベットや中国西域で収監されているウイグル族についての映画はもはや制作を検討されることはない。

 国防総省は中国軍に関する最新の年次報告書で、「中国は米国などの文化機関やメディア、財界、学界、政策コミュニティーのほか、国際機関に影響工作を実施し、軍事戦略目標を達成しようとしている」と指摘した。影響工作は、中国上層部で調整され、共産党中央統一戦線工作部、共産党中央宣伝部、諜報(ちょうほう)機関である国家安全省などさまざまな組織が実行している。