ユダヤ教徒のエルサレム聖地入場で衝突
イスラエルの武力行使を非難 パレスチナ
エルサレム旧市街にあるイスラム教とユダヤ教、双方の聖地「ハラム・アッシャリーフ(ユダヤ名は「神殿の丘」)」で8月11日、ユダヤ教徒の聖地入場をめぐり、パレスチナ人らイスラム教徒とイスラエル治安部隊との間で激しい衝突が発生した。イスラム教側は、聖地内で参拝者に武力を行使したイスラエル政府に責任があるとして非難した。(エルサレム・森田貴裕)
イスラム指導者が扇動か
ハラム・アッシャリーフの敷地内には、「岩のドーム」とアルアクサ・モスクがあり、イスラム教徒にとってはサウジアラビアのメッカとメディナに次ぐ第3の聖地。また、ユダヤ教徒にとっても、かつてエルサレム神殿があった聖地に当たる。
1967の第3次中東戦争(6日戦争)で、旧市街が位置する東エルサレムをイスラエルが占領。聖地はイスラエルの主権下にあるが、管理はヨルダンが行っている。
今年は、イスラム教のイード・アル・アドハ(犠牲祭)初日とユダヤ教のティシャ・ベ・アブ(神殿崩壊記念日)がちょうど重なった。イスラエル政府は、イスラム教の祭日にイスラム教徒以外の聖地入場を基本的に禁止しており、今回の犠牲祭の期間も、ユダヤ教徒の聖地入場は不可となっていた。
しかし、神殿崩壊記念日に毎年1000人以上で聖地を訪れるユダヤ教右派らが、聖地への入場を主張したことで、イスラエル政府は、最終的にユダヤ教徒の聖地入場を許可する発表を行った。
11日の朝、聖地には数万人ものイスラム教徒が、犠牲祭の祈りのために集結していた。警察当局によると、祈りの後、ユダヤ教徒が聖地に入場するムグラビ門の前には、イスラム教徒数千人が押し寄せ、一部が暴徒化し、イスラエル治安部隊に石や椅子などを投げ始めたという。
治安部隊はイスラム教徒の暴動を鎮圧するために催涙ガス、ゴム弾、閃光発音筒(スタングレネード)などを使用し、短時間ではあるが激しい衝突となった。この衝突で少なくともパレスチナ人61人が負傷。警察当局によると、警官4人が負傷し、暴徒7人が逮捕された。
イスラエル治安当局は、聖地への全ての入り口を閉鎖し、イスラム教徒の聖地への入場を制限した。
ネタニヤフ首相は、ムグラビ門に集まっていた多くのユダヤ教徒に門の外で待機するよう命じ、午前中に予定されていたユダヤ教徒の聖地への入場は中止された。その後、約1700人のユダヤ教徒と約200人の観光客が治安部隊同行の下で聖地を訪問した。
ヨルダン、サウジアラビア、カタールは、エルサレムの聖地内で参拝者に対し武力を行使したイスラエルを厳しく非難する声明を出した。
パレスチナ自治政府のアッバス議長のアブ・ルデイネ報道担当官は、「衝突の責任はイスラエル政府にあり、武力行使はイスラム教徒の感情に対する大きな挑発で、状況を刺激し緊張を高めている」と非難した。
ガザを実効支配するイスラム根本主義組織ハマスのカシム報道官は、「犠牲祭初日に、ユダヤ人の襲撃に立ち向かったパレスチナ人に敬意を表する」と述べた。
イスラエルの敵対国イランのザリフ外相は、「イスラエルの治安部隊はテロリストだ」とツイッターに書き込んだ。
パレスチナのメディアを監視する団体パレスチナメディアウオッチ(PMW)は、聖地でパレスチナ人による暴動を引き起こし、イスラエル治安部隊との衝突を発生させた責任はパレスチナ側にあると指摘した。イスラム教指導者らはパレスチナの群衆を扇動し、ユダヤ教徒が列をなして聖地入場を待っているムグラビ門の前で祈りながら抗議をするよう呼び掛けたという。






