イスラエル、シリアのイラン武器庫を空爆
軍事プレゼンス確立を懸念
シリアでのイランの軍事プレゼンス確立を懸念するイスラエルは、シリアのイラン関連施設を攻撃したと発表した。トランプ米政権がシリアに駐留する米軍部隊約2000人の撤収を開始したとされる中、イランに圧力をかける狙いがあるものとみられる。(エルサレム・森田貴裕)
露とは継続的協力で合意
イスラエルのネタニヤフ首相は13日、シリアの首都ダマスカスの空港にあるイランの武器庫を攻撃したことを明らかにした。
イスラエルはシリア内でイランの軍事拠点やイランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラへの武器輸送部隊などを繰り返し攻撃してきたとされるが、公式に認めるのは極めて異例。首相は「ここ最近の攻撃強化は、シリアに展開するイランに対し、これまで以上に行動を取るというイスラエルの決意を示すものだ」と強調した。
シリアの国営シリア・アラブ通信(SANA)によると、攻撃によって空港の倉庫が被害を受けたが、死傷者は出ず、イスラエルのミサイルのほとんどは迎撃されたという。シリア運輸省の関係者は、空港は通常通り活動していると述べた。
これを受けてイラン外務省のカセミ報道官は、「イスラエルの主張は根拠がない」と述べ、イランの軍事目標に対して空爆を実施したというネタニヤフ氏の主張をはねつけた。カセミ氏は、「イラン当局者はシリアに顧問として滞在している。テロと闘う方法についてシリア政府に助言するためだ」と強調した。
アラビア語紙アルクッズアルアラビによると、ロシア政府はイスラエルにダマスカス空港近くのイランの標的に対する空爆を中止するよう要求したという。ロシアは、8年に及ぶシリア内戦で被害を受けた空港の修理の準備をしていたという。
イスラエル軍によるシリアでの空爆は、昨年9月にイスラエル軍戦闘機の攻撃に応戦していたシリアによって誤ってロシア軍偵察機が撃墜され、乗員15人全員が死亡した事件の後、減少していた。
ロシアは、イスラエルの行動が一因と非難、地対空ミサイルS300をシリアに供与。昨年末にはシリアに引き渡されたとされるが、運用のための訓練を受ける必要があり、まだ使用されていないと考えられている。
ロシア機撃墜で、ロシア軍将校の代表団が17日にイスラエルを訪問し、関係改善を目的とした一連の会議が行われた。イスラエル軍は声明で、「継続的な協力について合意した」と述べた。
ネタニヤフ首相は14日、テルアビブにある国防省で行われたアビブ・コハビ参謀総長就任式で、「直面する主な課題はイランとそのテロの代理人」と述べ、「過去4年間でガザ、シリア、レバノンなどの地域でイスラエルに敵対する勢力の強大化を防ぐために対処してきた」と語った。また、「われわれは、精密誘導ミサイルを獲得しようとするヒズボラの活動を阻止し、北部のテロトンネルを破壊した。シリアでのイランの軍事的プレゼンスには断固対抗する」と強調した。
イスラエル軍は13日、北部レバノンからイスラエル領内に続く地下トンネルを探索、破壊する「北の盾作戦」の完了を発表した。昨年12月に開始されたこの作戦で、ヒズボラがイスラエルへの侵入目的で建設したとされる地下トンネル6本が発見された。破壊された地下トンネルは、イスラエル領内へ数十㍍も伸びていたという。
イスラエル軍は、レバノンとの国境沿いに防護壁の建設を予定している。







