「憎しみでなく希望を」 パレスチナ人医師が会見


娘3人失う悲しみを越え、中東で女子教育

 イスラエル軍の攻撃で娘3人とめいを失いながらも、中東地域で女性教育の振興に努めるパレスチナ人医師イゼルディン・アブエライシュ氏(62)が来日し、27日に東京・内幸町の日本プレスセンターで記者会見した。日本での講演で「私が苦しんだような体験を人々がしないよう、希望のメッセージを伝えたい」と語った。

イゼルディン・アブエライシュ氏

記者会見するイゼルディン・アブエライシュ氏=27日、東京・内幸町の日本プレスセンタービル(石井孝秀撮影)

 アブエライシュ氏は現在、トロント大学准教授を務める一方、中東地域に平和をもたらすには女性の役割が重要だという信念の下、亡くした娘たちにちなんで名付けた基金を設立し、中東の若い女性たちに教育を提供する運動を展開。自身の体験をつづった著書「それでも、私は憎まない」は、全世界の23言語に翻訳されている。

 同氏は、目の前で娘らを失った時は深い悲しみに包まれたが、イスラム教の信仰から怒りや憎しみを抑える寛大さや勇気を得たと強調。「死んだ娘たちは戻らないが、悲劇を善なる大義のためにどう生かすかを考え、このメッセージを語っていこうと決意した」と語った。

 拡散する過激主義については「イスラム教には本来、過激主義はない。人々の考えの中にある」と断じ、「イスラム教と過激主義を結び付けるべきではない」と主張。争いや貧困が過激思想を浸透させる温床になっているとの見方を示した。

 また、世界中の人々がパレスチナの自由のために立ち上がる責任があると強調し、日本政府に対してはパレスチナとイスラエル双方の安全や平和に努力していると評価した。

 同氏は今後、大阪(28日)、広島(29日)、東京(31日)の3都市を訪れ「イゼルディン・アブエライシュ博士歓迎実行委員会」(代表・中川十郎名古屋市立大学特任教授)主催の講演会でスピーチする予定だ。