トランプ米大統領、中東政策で大胆な転換


「リヤド演説」に高い評価

 トランプ米大統領の初外遊となった中東訪問は「伝統的な同盟関係を重視する姿勢を示した」(米メディア)ものになった。中でも21日にサウジアラビアの首都リヤドで行った演説は、オバマ前大統領の中東政策をリセットし、イスラム諸国と連帯してテロに立ち向かう「トランプ・ドクトリン」を新たに示したとして高く評価されている。(ワシントン・岩城喜之)

トランプ氏(左)とサルマン氏

トランプ米大統領(左)とサウジアラビアのサルマン国王=20日、リヤド(AFP=時事)

 トランプ氏はイスラム諸国の首脳ら約50人が集まった国際会議で「われわれの目標は、過激主義を撲滅し、子供たちに希望ある未来をもたらすという目的を共有する諸国の連合形成だ」と述べ、宗派を超えて結束する必要性を強調した。
 トランプ氏の演説は「外交政策の道筋を示し、国際的なテロとの戦いにおける基準を設定した」(CNNテレビ)ことから、米国とアラブ・イスラム諸国が連携する最初の一歩になったといえる。

 ニュート・ギングリッチ元下院議長はワシントン・ポスト紙への寄稿で「米大統領がテロとの戦いで中東やアフリカを含む文明世界の団結をこれほど明確にしたことはない」と強調。さらにトランプ氏の演説について「米外交史上で同様の劇的な瞬間を探そうとすれば、1982年にレーガン元大統領が英ロンドンで行った共産主義への対抗を呼び掛けた演説までさかのぼる必要がある」とし、「歴史的な演説だった」と高く評価した。

 オバマ氏も任期中に「イスラム世界との関係構築」を訴えていたが、イランとの関係改善を優先したためサウジやイスラエルとの関係は悪化する一方だった。さらに「世界の警察官」としての役割を放棄し、紛争への介入に消極的な姿勢を続けたことから、イスラム圏における米国の影響力は大きく低下した。

 こうしたオバマ氏の中東政策の原点となったのが、2009年6月の「カイロ演説」だった。

 これに対し、トランプ氏は「リヤド演説」でオバマ氏の中東政策を大胆に転換し、関係国の連携を呼び掛けると同時に、テロとの戦いでイスラム指導者にも責任を持たせることを目指した。

 米シンクタンク、ハドソン研究所の元所長ハーバート・ロンドン氏はワシントン・タイムズ紙への寄稿で、トランプ氏の演説について「米国のリーダーシップの復活を示すことができた」とし、「象徴的な意味で大成功といえる」と称賛した。