暴力否定・差別撤廃の新宗教令を

アルアハラム政治戦略研究所研究員
モハメド・F・ファラハト氏(下)

トランプ次期米大統領はイランと西側との核合意を再考すると語ったが、どう評価する。

モハメド・ファイエズ・ファラハト

1992年カイロ大学政治経済科学学部学士号。アルアハラム政治戦略研究所研究員を経てアルアハラム財団事務局長。現在は事務局長を退き、研究に専念。2001年、同大学で修士号取得。韓国の対米外交、アフガニスタンと東南アジアのテロなどテーマに論文・記事。

 彼の最近の数カ月間の声明などを通じて理解しようとするなら、米国の中東政策は戦略的変化をするだろうと思う。しかし、この変化が中東地域をより安定に導くかというと、全体的には中東を不安定化すると思う。

 合意前のイランと西側の対立は非常に厳しかったが合意は双方の関係を安定化させた。湾岸諸国はこの核合意自体は拒否しなかった。湾岸諸国は、この合意が、イランに、核兵器開発プロジェクトの歴史的な停止をさせることを確信したかった。さらにこの合意がイランに、この地域への野望を与えないようにしたかったのだ。

 トランプ氏は湾岸諸国との財政上の戦略的関係を再考すると語った。彼は湾岸諸国にある米軍の駐留を再調査し、軍事基地を維持して湾岸諸国を守るための経費をより多く要求すると思う。湾岸諸国はその要求を受け入れると思う。湾岸諸国は米軍の支援のみならず、イランや他のこの地域の敵に対抗するため、米国の核の傘を必要としているからだ。他の選択肢は無い。湾岸諸国が米国の代わりに中国やロシアを持ってくると、冷戦が始まることになり、冷戦では済まされず、本物の戦争に突入する可能性がある。

オバマ政権はイラクでもシリアでも和平達成に失敗し、シリア難民は世界的課題となっている。シリア問題にトランプ政権はどう取り組むだろうか。

 シリアについて、トランプ氏は、ロシアとより協力関係を取ると思う。過去5年間ロシアとの協力関係が無かったことが、中東地域の不安定を招いたという教訓を得ているからだ。トランプ氏は、反体制派のムスリム同胞団に肩入れしたオバマ氏よりアサド政権を受け入れようとしていると思う。

過激派組織「イスラム国」(IS)は、シリアでもイラクでも拠点を失い、後退しているが、自爆テロは世界に拡散している。

 一部の研究者らは、ISは来る2、3年で消滅するだろうと言っているが、私はその意見には全く同意できない。エジプトでは、ISはシナイ半島にもつくられた。エジプトの過激主義者らを滅ぼすことは、今のエジプトの戦力をもってすれば、数年で可能だが、エジプトの過激主義者らは、中東地域の過激主義者らと連携している。ところが各国の治安当局は連携できていない。もし米国が、軍事行動をシリアやイラクに集中するなら、過激派は別の国に行くだろう。それは彼らにとって簡単なことだ。だから、包括的な地域協力なくして状況は悪くなるだろう。

テロの原因となるイスラム過激主義思想を取り除く最良の方法は何か。

 彼らが読んでいる古い過激主義の本を批判することによって思想戦線で攻撃すべきだ。現在の時代に適合したファトワ(宗教令)を準備することを考えなければならない。例えば、過激主義者の思想はイスラム教の一部ではなく、イスラム教は穏健な宗教で、いかなる人間も、たとえ非イスラム教徒でも殺害することを拒否するということを強調すべきだ。また、非イスラム教徒に課税するなどの他宗教に対する差別も撤廃するファトワを出すべきだ。

 アズハル(カイロにあるスンニ派総本山)は、全てのモスク(イスラム礼拝所)でこの宗教的スピーチを講演することを決断した。今はまだこの点は、あまり進展していないことを知っているが、しかし将来は必ず大きな流れになると思っている。