イスラエル 湾岸2カ国と国交正常化
アラブ諸国との関係改善が拡大
イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンのアラブ2カ国が15日、米ホワイトハウスで国交正常化協定に調印した。1948年のイスラエル建国以来、国交を結ぶアラブ諸国はこれで4カ国となった。仲介役のトランプ米大統領は、他のアラブ諸国もイスラエルとの関係が改善される可能性を示しており、アラブのメディアなどでは追随する国々の臆測が広がっている。(エルサレム・森田貴裕)
サウジも追随か
パレスチナは抗議、孤立へ
国交正常化協定の署名式には、イスラエルのネタニヤフ首相、UAEのアブドラ外務・国際協力相、バーレーンのザイヤーニ外相が出席し、イスラエルとUAE、イスラエルとバーレーンのそれぞれの2国間合意文書に署名した。2国間協定に加えて、世界的な三大一神教であるユダヤ教、イスラム教、キリスト教の共通の父祖アブラハムにちなんだ「アブラハム合意」と呼ばれる三国間文書にも署名し、トランプ氏も証人として署名した。協定に基づきイスラエルとUAE、バーレーンは相互に大使館の開設のほか、技術、観光、貿易、安全保障などの分野で協力していく。
トランプ氏は署名式典での演説で、「数十年にわたる対立と紛争の末、新しい中東の夜明けを迎えた」と称賛。「すべての信仰を持つ人々が平和と繁栄の中で共に生きる大きな一歩だ」、イスラエルとUAE、バーレーンの中東3国は、「友達であり、互いに協力し合うだろう」と語り、中東情勢の安定化に期待を示した。
ネタニヤフ氏は、「歴史の転換点であり、平和への新たな幕開けだ」と述べ、合意を歓迎。「これは指導者間の平和ではなく、民族間の平和である」と語った。
アブドラ氏は、パレスチナの領土の併合を中止したことに対してイスラエルに謝意を表明した。
ザイヤーニ氏は、「中東湾岸地域に平和、安全、繁栄をもたらすことは今や夢ではなく達成可能となった」と期待を述べた。
パレスチナは、占領国であるイスラエルとの国交正常化の合意については、断固として拒否し、その姿勢を批判するとしているが、孤立状態にあり苦しい立場だ。
パレスチナ自治区ヨルダン西岸地区とガザ地区の各地で15日、抗議デモが行われ、米、イスラエル、UAE、バーレーンの指導者らの写真に火を付けた。署名式の最中、ガザ地区からイスラエル南部に向けロケット弾2発が発射され、うち1発がアシュドッド市内に着弾し、イスラエル人3人が負傷した。
トランプ氏は、「まだ時間はかかるものの、アラブ諸国の他の5、6カ国が同様の合意に向けて動いている」と述べ、サウジアラビアもいずれ国交正常化に合意するとの見通しを示している。
サウジは2002年に発表した「アラブ和平案」の立場を維持する姿勢を示している。この和平案は、イスラエルによるパレスチナの占領地からの完全撤退とパレスチナ国家の樹立を条件に、アラブ諸国がイスラエルとの関係を正常化させるというものだ。
イスラエル紙エルサレム・ポスト(電子版)によると、ソーシャルメディアやアラブのニュースサイトへの投稿では、クウェートやカタールがイスラエルとの国交正常化に合意する可能性が高いという。
クウェートは、湾岸地域における米国の主要なパートナーとして戦略上非常に重要で米軍が駐留しており、イランの軍事的影響力拡大を懸念している。カタールは、中東における米国の重要な同盟国で米空軍基地もあり、適切な時期にイスラエルの譲歩後、国交正常化が進む可能性があるという。その他の国では、スーダンやサウジなどがリストに挙げられている。
米国と同盟関係にあるイスラエル、サウジ、UAE、カタールをはじめ、中東の国々は、自国の安全保障のために米軍の駐留を必要としている。しかし、これらの国々は中東からの駐留米軍撤退によって生じる空白を埋めるため、対イラン包囲網の必要に迫られている。利害の一致によるイスラエルとアラブ諸国の関係改善という流れは、今後も続く可能性が高い。