レバノン爆発事故 「政府に金を渡すな」


市民が仏大統領に懇願

 フランスのマクロン大統領が6日、大規模爆発で壊滅的被害を受けたレバノンの首都ベイルートを視察した。爆発後、外国からの首脳訪問は初めて。マクロン氏は被害現場で歓迎を受けるとともに、レバノン政府に対する市民の不信感があらわになったと、仏メディアは伝えた。

マクロン大統領

6日、ベイルートの大規模爆発の現場近くで若者を見舞うフランスのマクロン大統領(右)(AFP時事)

 7000トンを超える危険物の硝酸アンモニウムを、老朽化した港湾倉庫に6年にわたり放置した政府に対し、市民の怒りは頂点に達している。マクロン氏は現場で市民によって揉(も)みくちゃになり、市民が「レバノン政府に金を渡さないでほしい」「彼らが支援金を着服するだけだ」と叫ぶ映像が仏公共TVフランス2で何度も流された。

 マクロン氏は記者会見で「白紙の小切手は渡せない」と述べ、支援の条件として腐敗した政治や不透明な財政、富が一部の既得権益者に集中する状況の改革をレバノン政府に要求した。

 爆発で30万人が住居を失ったといわれ、再建には莫大(ばくだい)な資金が必要になる。旧委任統治国であるフランス政府は爆発直後から支援を表明していた。

 マクロン氏は、今年3月に債務不履行(デフォルト)を宣言したレバノンが腐敗にメスを入れる改革を断行しない限り、「国家は破綻する」と警告していた。

 レバノンは独立後、内戦に明け暮れ、海外に移住した人口が国内人口を上回る。マクロン氏の訪問を受け、レバノン市民からはフランス統治の復活を求める声まで飛び出した。

(パリ 安倍雅信)