非核化の核心欠けた南北首脳会談
“民族経済”で韓米不信拡大も
南北首脳が19日、平壌共同宣言で「戦争のない平和・繁栄、対決と敵対終息、自主・民族和合」を宣言したが、北朝鮮が出した具体的な非核化の実践目録は極めて不十分だった。専門家の参観の下、東倉里ミサイル施設の閉鎖と米国の相応措置がある場合の寧辺核施設の永久廃棄が全てだ。
これは完全な非核化および検証された非核化に遥(はる)かに及ばないだけでなく、北朝鮮の本質的な非核化と関係がない。北朝鮮はすでに東倉里の他に数多くの移動式発射台を持ち、寧辺施設の閉鎖も2007年の冷却塔爆破ショーの再現になる可能性が濃厚なためだ。
もはや北朝鮮に非核化の意思がないことは事実として立証された。北朝鮮は“韓半島の非核化”という不正確な概念で米国主導の制裁・圧迫の刃を免れながら、時間稼ぎを試みているにすぎず、平和・民族(和合)を渇望する文在寅政府を利用しているだけだ。
北朝鮮が核保有を“平和を担保する宝剣”と自負していることはよく知られている。それでも金正恩労働党委員長は年内のソウル訪問を約束する柔軟性を見せ、文大統領は“民族経済”を繰り返し明言して、南北の鉄道・道路連結と開城工業団地・金剛山観光事業の再開に言及した。これらの事業が対北制裁に違反する可能性は何度も指摘されたし、特に米国務省とホワイトハウスは南北関係の進展が速すぎることを警戒し、非核化と分離はできないと警告してきた。
文在寅政府は非核化戦略が失敗したことを認め、韓米協力中心の制裁・圧迫に忠実でなければならないが、そのような意図はないように見え、今後、韓半島で起こる極度の不安定と混乱を憂慮せざるを得ない。
まず韓米不信の泥沼がより一層深くなる危険性だ。トランプ大統領の韓半島戦略は韓国の想像を超えて両極端を行き来している。参謀らの引き留めで不発だったが、在韓米軍撤退と韓米FTA(自由貿易協定)廃棄を指示した裏に、北朝鮮に肩入れする文在寅政府に対する不信と韓国内の反米感情の拡散があることを見過ごしてはならない。
文在寅政府が米国の反対にもかかわらず経済協力を独自で執行するなら、米国が軍事オプションのカードを持ち出す可能性を排除できない。
板門店宣言とこれを継承した平壌宣言を存分に活用して、北朝鮮の平和赤化戦略が活発に展開する可能性も高い。北朝鮮が主張する祖国統一は主体思想に立った韓半島の共産化統一を意味する。金委員長のソウル訪問を契機に造成される平和ムードの中で、北朝鮮が“民族団結”を害する反統一悪法だと批判してきた国家保安法の廃止を要求することもあり得るのだ。
(洪官憙(ホングァンヒ)成均館大招聘教授、9月21日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。