米朝会談、バラ色の幻想は禁物


韓国紙セゲイルボ

冷静に“非核化”の見極めを

 外交界には、「失敗する首脳会談はない」という言葉がある。最高指導者間の会合だけに、数十回の事前調整で対立懸案を解決しておくという意味だ。来月12日、シンガポールで開かれる米朝首脳会談も失敗しない可能性が高い。米朝情報当局間の秘密接触が数回あったという。マイク・ポンペオ米国務長官の2度の訪朝は事前接触の成果を反映している。

ポンぺオ氏(左端)と金正恩

訪朝したポンぺオ米国務長官(左端)と笑顔で歩く金正恩朝鮮労働党委員長=5月9日、平壌(KCNA/UPI)

 北朝鮮も韓国と中国を相手に今後の改革・開放のための事前整地作業に着手した。双方の立場がすでに収斂(しゅうれん)された可能性を傍証している。具体的な非核化議論を予想することは難しいが、明らかなのは新しい合意が出てくる可能性が高いということだ。

 韓国ではすでに南北の観光開発を口にする人がいれば、中朝国境地域にある中国丹東の不動産価格が動き出し、非武装地帯に近い京畿道坡州地域の地価が高騰するのもこういう雰囲気を反映したものだ。

 政府与党は南北の山林協力、鉄道連結を提案している。北朝鮮の鉱物開発や電力事業など経済協力構想も相次いで出ている。はなはだしいのは軍の服務期間が短縮されたり、徴兵制自体が廃止されるかもしれないという期待感も出ている始末だ。

 トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が非核化合意宣言を出したとして、その以後の実質的な非核化作業がより一層重要になってくる。核凍結と申告、査察と廃棄という至難な過程を経なければならないからだ。核の完成度が北朝鮮よりも顕著に劣っていたリビアでさえ22カ月もかかったという。北朝鮮はほとんど完成段階の核を持っており、施設などもリビアより多い。

 その過程の困難をいま速断するのは容易でない。過去のように核廃棄の最後の段階で破棄される可能性もある。特に今回の米朝首脳会談は通常の首脳会談とは性格が違う。最高指導者間ですでに“非核化合意”という目標を定めて実務会談が始まった。

 事前接触があっても、不安な多くの問題はほとんど議論されていない可能性が大きい。細部には触れず封印したまま象徴的なことだけで解決していく公算が大きいという意味だ。バラ色の幻想は禁物だ。

 非核化が遂行されるのかどうかの見極めもなく、その前から経済協力の話をするのは避けるべきだ。政府は祭りの雰囲気を助長するのでなく、国民がもう少し冷静に見られるように抑制する必要がある。石橋も叩(たた)いて渡る慎重さが必要だ。

(イ・ウスン北京特派員、5月17日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。