ICBM開発前に先制攻撃も
北朝鮮核・ミサイル危機と韓国新政権
拓殖大学客員研究員 高 永喆氏
世界日報の読者でつくる世日クラブ(会長=近藤讓良・近藤プランニングス代表取締役)の定期講演会が13日、都内で開かれ、拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授の高永喆氏が「北朝鮮核・ミサイル危機と韓国新政権」をテーマに講演した。高氏は、北朝鮮は「1~2年以内に米国まで届く1万キロメートル以上のICBMを開発する可能性が高い」と強調し、それまでに米国が北朝鮮への先制攻撃に踏み切る可能性を指摘。その上で「日米韓は安全保障上の運命共同体である」として、三カ国が連携を強化して北朝鮮に対応することを求めた。
(以下は講演要旨)
米はリアルタイムで北を監視
情報心理戦で日韓離間図る北
1980年代の終わりから90年代初めにかけて、東欧諸国が改革開放路線を取り、中国も扉を開き、東西ドイツが統一され、ついには旧ソビエト連邦が崩壊した。

コ・ヨンチョル 1975年、韓国朝鮮大学(奨学生)卒後、海軍将校任官。駆逐艦(中尉)、国防省専門委員(大尉)、特海高速艇隊長(少佐)を経て、84年、海軍大学(正規18期)卒。89年、米国防情報学校修了後、国防省北韓分析官、94年、日本担当官(防衛交流)で退官。現在、拓殖大学客員研究員、JFSS(日本戦略研究フォーラム)研究員。著書に『韓国左派の陰謀と北朝鮮の擾乱』(佐藤優共著、ベストセラーズ)など多数。
その頃、北朝鮮も間もなく扉を開いて市場国家に生まれ変わるだろう、あるいは崩壊するだろうと言われていた。しかし、実際には北朝鮮は崩壊せずに、強い核兵器保有国家になった。
北朝鮮が崩壊しない1番目の理由は、北朝鮮には内部告発の仕組みがあることだ。民間人に対しては、秘密警察の国家安全保衛部、軍隊に対しては保衛司令部が24時間尾行しながら監視している。例えば、3人くらいが居酒屋で、体制を非難したら必ず1人が内部告発をする。それが怖いから、皆本音を言わない。
2番目の理由は、韓半島の地政学的位置だ。朝鮮半島地域は、中国、ロシア、北朝鮮の大陸勢力と日米韓の海洋勢力が衝突する戦略的な要衝地であると言われている。いわゆる38度線(軍事境界線)がこの二つの勢力の均衡を維持するセンターラインであると言える。
北朝鮮は、6月9日、新型対艦巡航ミサイル発射実験を成功させたと発表した。「米空母艦隊を接近させない。一発で沈没させる」というが、実際には話にならない。私のような軍隊経験が長い人間から見れば、対艦ミサイルは、ほとんどすべて撃ち落とせる。
米太平洋軍のハリス司令官は聴聞会で、北朝鮮に対する先制攻撃の方策はさまざまあるが、この場では具体的な作戦内容は言えないと4月26日にはっきりと言った。その後、国務長官と国防長官、国家情報局の3者が、同盟国である日本、韓国と緊密な調整、協力をすると言っているが、それは軍事オプションもやむを得ないという意味だ。その半面、北朝鮮の非核化のために、交渉する扉も開けておくと発表している。
北朝鮮は、現在の緊張を正面突破するということで軍事挑発に踏み切る可能性がある。今後の予測としては、ICBM(大陸間弾道弾)の発射や第6回目の核実験に踏み切る可能性が高い。それが文字通りレッドラインになる可能性がある。
米国は「戦略的忍耐」は終わったと言っている。トランプ大統領はビジネスマン出身だから、結果を出すために命懸けで必死に頑張る。次の大統領選に向けて人気を上げるために、北朝鮮を叩くとも言われている。
その反面、ソフトランディングの可能性もあり得る。米国は北朝鮮の核開発を廃棄あるいは凍結できるように中国に働き掛けて、中国は北朝鮮にプレッシャーをかけるようにするだろう。それが効かない場合は、一つの外交カードとして、中国が北朝鮮の核開発を止めないと、日本、韓国、台湾の保有を容認せざるを得ないと説得するのが望ましい選択肢ではないかと言われている。
中国が一番怖いと思うのは、日本の核武装で、次は韓国の核武装。戦略核兵器を韓国に再配備するというのも選択肢の一つとして考えられる。
米国の従来の対北朝鮮へのスタンスは、現状維持政策でソフトランディングを目指すというものだ。なぜかというと、北朝鮮は“やぶ蛇”のような存在だから、そのまま置いておいた方がいいという考え方が背景にある。韓国と日本は北朝鮮のミサイル攻撃の射程圏内だから、米国も攻撃に踏み切れないということがあった。
また、北朝鮮は“熟柿”だから、いつかは崩壊するという考え方もあった。だから、現状維持しようという米国のスタンスがあった。
北朝鮮は、1~2年以内に米国まで届く1万キロメートル以上のICBMを開発する可能性が高い。米国の分析では、すでに核弾頭の小型化も完了状態で、潜水艦から発射するミサイルにも搭載できるだろうとされている。
ICBMを完成した段階では米国は北朝鮮への攻撃に踏み切れない。だから、米国としては、今年、来年がゴールデンタイムと言われている。そうでないと9・11のように米国本土が攻撃を受けるような大惨事を迎える恐れがある。
米軍は、偵察衛星、通信傍受、U2偵察機、無人飛行機のグローバルホーク、人間を媒介とした情報で北朝鮮を24時間リアルタイムで監視している。砲兵部隊がいまどう動いているのか、ミサイルの発射基地の準備状況がどうなっているかが察知できる。だから、北朝鮮に対する先制攻撃のタイミングを絶対見逃さないだろう。
外科手術的攻撃(サージカル・ストライク)という空爆シナリオもある。これは、すでにイラク戦争の時に証明されている。最初に電子攪乱機を飛ばして、北朝鮮の通信司令部、コンピューターのネットワークを攪乱(かくらん)させ、外科手術前の麻酔のようにコンピューターシステムを麻痺(まひ)させる。その段階で陸海空からピンポイント空爆に踏み切るというものだ。米国は、それができるほど技術が発達している。
専門家の間では、米軍が北朝鮮に陸海空から全面的な空爆に踏み切る場合は、1時間以内に制圧できると言われている。その後は、第二波、第三波攻撃を行い、その後2カ月間、地上軍が駐屯して平和構築活動を行うというプロセスをたどると言われている。
韓国では5月9日に文在寅大統領が誕生した。朴前大統領は、人生のつらい苦労をしていない「お姫さま」であると言われ、格差社会に対する不平不満の標的になった。文大統領は、そんな感情を煽(あお)り立て、政権を取った。親北朝鮮は左派連中が扇動して、事実歪曲して、ろうそくデモを扇動した。
これは、韓国人や日本人に成り済ました北朝鮮のサイバー情報心理戦の成果でもある。韓国はサイバー専門要員は2900人ぐらいしかいない。北朝鮮には6000人いる。彼らは、米国のCIAと同じハイレベルの知識を持っている。
彼らが韓国人や日本人に成り済まして竹島問題、慰安婦問題などで日韓離間工作を行っている。韓国と日本の純粋な人々は着実に騙(だま)されつつある。
朴前大統領はお姫さまではない。父親も母親も暗殺されている。テロに遭い、カッターで15センチ切られたこともある。還暦を過ぎても、結婚せず、寂しい独身生活だった。お姫さまではなく、悲劇の女だ。両親が暗殺されたので、誰も信頼しない。いつも一人で食事していた。だから、われわれ庶民の相手をしないお姫さまと言われ、足を引っ張られた。
なぜ韓国では賄賂疑惑、不正疑惑が多いのか。それは、米国大統領の場合は、政府高官など任命するのは1200人ぐらいだが、韓国大統領は公益財団幹部なども含め3万カ所の人事権を持っている。だから、ポストを獲得するために不正が発生する。
野党の方も、国民の党の朴智元代表が金大中政権時代に北朝鮮に5億ドルを不正送金したことがある。それを問題化すべきなのに朴前大統領は問題にしなかった。文大統領には、国連の対北朝鮮人権決議案について北朝鮮に事前に協議して、それが利敵罪に当たるという疑惑がある。
まとめとしては、日米韓は安全保障上の運命共同体である。日米同盟と米韓同盟が地域平和の二つの柱になる。特に日韓離間を図る北朝鮮と中国による情報心理戦に絶対騙されてはいけないということだ。





