【社説】韓国大統領選 安保重視する候補に期待
来年3月実施の韓国大統領選に出馬する与野党の公認候補が出揃(そろ)い、与党「共に民主党」の李在明前京畿道知事と最大野党「国民の力」の尹錫悦前検事総長による事実上の保革一騎打ちとなる公算が強まった。新しい大統領は日韓関係はもとより、安全保障上の緊張が高まる北東アジア情勢にも影響を与える。高い関心が寄せられよう。
政権交代論が過半数
今回の大統領選では、失政が続いた文在寅政権に対する審判論が選挙結果を大きく左右するとみられている。
朴槿恵前大統領の国政介入事件を痛烈に批判し、「公正」や「正義」を掲げて当選した文氏だったが、自身の後継者とも言われた閣僚の家族をめぐる大学不正入学や政府関係者による内部情報を利用した不動産不正投機などの疑惑が浮上。裏切られたと感じる国民が増えていった。
国民の関心が高い不動産問題でも失政が続いた。価格高騰に歯止めを掛けられず、歴代政権では見られなかったほど異常な高騰幅を記録した。若者たちの間に「一生かかってもマイホームを手に入れられない」という絶望感まで広がった。
こうした経緯もあり、現在、次期大統領選で政権交代を望む世論は過半数に達している。尹氏は文政権下の不正疑惑に捜査のメスを入れようとした「反文在寅」の象徴的人物でもあったため、政治経験が皆無にもかかわらず、一気に最大野党の公認候補に昇りつめた。
ただ、文氏の支持基盤を引き継ぐ李氏には岩盤支持層がいる上、行政手腕やカリスマ性で人気が高い。政権審判論がそのまま選挙結果に反映されるかは予断を許さない。
もちろん次期大統領を決めるのは韓国の有権者だ。だが、隣国の日本としてもその行方を注視せざるを得ない。
まず戦後最悪とまで言われた日韓関係を改善させる鍵を握るのは韓国次期大統領だからだ。慰安婦問題や徴用工問題で一方的に日本との合意や国際法を無視し、その是正をしないまま冷え切った関係を修復させる意思が問われている。
李氏は過去に反日的な発言が目立つ上、対日政策に関わる可能性があるブレーンには対日強硬派も少なくない。大統領に当選した場合、関係を改善できるか不安が先立つ。
一方、尹氏は文氏の対日強硬路線に批判的だ。周囲で政策を建議する外交・安保専門家たちも比較的、日本との未来志向を重視している。尹氏が当選すれば関係改善の糸口を見いだそうとするのではないか。
日韓関係改善は地域安保に不可欠だ。覇権主義の中国、核・ミサイル開発路線をひた走る北朝鮮にどう向き合うかという北東アジア安保の最大懸案をめぐっても、李氏と尹氏の政策は正反対になる可能性がある。李氏に対しては中国・北朝鮮に融和的な文氏の路線を踏襲するとの見方があり、尹氏は日米との連携を立て直すとみられている。
有権者は賢明な選択を
次期大統領に託されるのは得てして経済問題になりがちだが、安保が盤石で初めて安心して日常生活を送れる。韓国有権者に賢明な選択を期待したい。