【韓国紙】日本の経済安保の矛先が向かうのは?


韓国紙セゲイルボ

特有な「聲東撃西」に警戒を

岸田文雄首相は8日の所信表明演説で新内閣の重点政策4大柱の一つが経済安全保障であることを強調した。「戦略物の資確保や技術流出の防止に向けた取り組みを進め、自律的な経済構造を実現する。強靭(きょうじん)なサプライチェーンを構築する」と宣言した。
 小林鷹之初代経済安保担当相が管轄する経済安保室が新設されるとの報道も流れた。同室に経済産業省と財務省から20~30人の官僚が派遣され、まず経済安保推進法案を準備するということだ。

参院本会議で所信を表明する岸田文雄首相=8日午後、国会内

 経済安保問題を主導する勢力が自民党であり、その核心が自民党政務調査会傘下の「新国際秩序創造戦略本部」だ。新国際秩序を創造するという組織の名前からして穏やかではない。戦略本部は昨年6月、岸田首相が政調会長の時期に発足した。安倍晋三、麻生太郎両元首相とともに「3A」と呼ばれる甘利明自民党幹事長が座長、小林経済安保相が事務局長に就いていた。

 日本経済安保の指向するところは戦略本部の昨年12月の提言と今年5月の中間とりまとめに現れている。経済安保の観点から日本の産業経済の脆弱(ぜいじゃく性と優位性を把握した後、脆弱性を解消して、日本の戦略的な自律性を高め、優位性は支援して、(国際社会での)日本の戦略的な不可欠性を強化するという目標を設定している。

 日本は米中対立を経済安保政策推進の主な理由としているが、さまざまな面で韓国に及ぶ影響を無視できない。日本政府が「産業のコメ」半導体の国内生産を誘導するため、天文学的な資金を投入して台湾メーカー(TSMC=台湾積体電路製造)を誘致しようとしていることから見られるように、韓国が直面する国際競争の構図が一層激化するものと見られる。

 特に日本特有の「聲東撃西」(陽動策)を警戒しなければならない。経済安保ドライブが韓国を標的とする可能性がある。戦略本部は5月の中間とりまとめで直接、韓国を取り上げた。「2004年にIAEA(国際原子力機関)が韓国のウラン濃縮実験施設を査察した際、わが国(日本)で特許公開されていた核関連技術が用いられていた」と主張し、特許制度の整備を通じた技術流出防止を提言している。

 19年、韓国に対する輸出規制とホワイト国(輸出手続き優待国)排除措置もより大きい枠組みで再認識する必要がある。これが単純に過去の歴史と関連した韓日の懸案から始まったものなのか。当時、安保上の理由を挙げていたことを韓国は軽視していたのではないか。日本企業の被害を甘受しながらも韓国を圧殺しようとしたのは、戦略的に韓国を排除しよういう意図から始まったと見ることができる。

 すでに安倍政権以来、日本政府は韓国を日本と普遍的価値を共有する同志国から除外した事実もある。日本が抜いた経済安保の矛先がどこへ向けられているのか、注視しなければならないのはこのためだ。

(金青中(キムチョンジュン)東京特派員、10月11日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

日本が経済安保を重視する理由

 岸田内閣の目玉の一つ「経済安保担当」ポストの設置は日本の産業技術や特許、さらに種子の流出などを防止し、海外での権益を守るためのものだ。この措置が取られた背景には特許侵害にとどまらず、ブドウやイチゴなどが不当に持ち出され商品化されて、本家本元の日本が被害を受けている現状がある。
 この原因の第一は日本側の緩い保護観念と低い防御意識だが、日本が長年、資金と人力を投入して開発した技術や頭脳・人材などが保護されずに簡単に持ち出されるという「産業技術安保」意識の低さが決定的で、その反省の上に立っている。

 この措置が韓国を狙ったものではないかというのが金青中特派員の心配だ。自意識過剰とも思えるが、確かにその面はある。ではなぜ日本がその措置を取ったのか。分析が不十分だ。

 IAEAの査察で特許公開された日本の核関連技術が韓国のウラン濃縮実験施設で使われていたことが明らかになった。それ自体も問題だが、さらに懸念されるのは、それが第三国に流出する恐れが十分にあるということだ。ブドウやイチゴどころの話ではないのである。

 フッ化水素などの輸出管理見直しを行ったのは戦略物資がテロ国家に渡る可能性を危惧したためだった。韓国はそれが絶対ないと日本に保証しなければならない。そのためには「普遍的価値」が共有され、信頼関係が築かれなければならないが、現政権の対日政策をみれば、日本政府の評価が素っ気なくなるのも無理はない。

 外交に限らず何事も「自尊心」を基準にしたがる韓国には「経済安保」という合理主義に立った政策を理解してもらうのは難しいのかもしれない。(岩崎 哲)