中国建国70年 信頼得られぬ独裁と覇権主義
中国はあす、建国70周年を迎える。中国当局は「習近平国家主席が2017年の共産党大会で打ち出した『新時代』に入って初の建国記念閲兵式を行う」と述べ、過去最大級の軍事パレードを予定している。江沢民元国家主席は建国50年、胡錦濤前国家主席は建国60年の節目にそれぞれ大規模な軍事パレードを実施しており、これに倣ったものであろう。その背景は何か。
米国が制裁関税を発動
考えられるのは「建国の父」とたたえられている毛沢東や「改革開放の総設計師」と呼ばれていると鄧小平と肩を並べ、歴史に名を残す指導者になりたいという習氏の野望である。
しかし、今年3月開催の中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)で、李克強首相は2019年の経済成長率の目標を「6・0~6・5%」にすると表明した。これは18年目標の「6・5%前後」からの引き下げだ。中国経済の減速は明らかであり、内政面で苦境に突入しつつあることを示している。
外交面では対米関係のつまずきが大きい。トランプ米大統領は知的財産権の侵害を理由に厳しい対中制裁関税を発動した。
米国内では各方面で中国脅威論が高まっている。中国政府が国内に進出した米企業に対して技術移転を強要したり、サイバー攻撃による技術の盗み取りを行ったりしたことが一因だ。ペンス米副大統領は演説で中国との「全面対決」を宣言しており、対米関係の悪化が中国をさらに苦境へ追い込むだろう。
中国の問題点は、共産党の一党独裁国家であるとともに、習政権が「中華民族の偉大な復興」を狙うナショナリズム路線を歩んでいることだ。
中国は現在、高度な自治を保障した「一国二制度」を形骸化させ、香港に対する締め付けを強めている。香港では、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案に反対する大規模デモが起きるなど市民の危機感は強まっている。
さらに今年に入って、習氏は一国二制度による台湾統一を目指す方針を打ち出し、武力行使も排除しない強硬な姿勢を示した。これに対し、台湾の蔡英文総統が「われわれは一国二制度を断じて受け入れない」と拒否したのは当然の反応だ。
国際社会の懸念は強まっている。習氏が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」に対して「インフラ投資を通じ、弱小国を借金漬けにする新植民地主義」との批判が噴出しているのも、その例と言える。南シナ海の軍事拠点化も一方的な現状変更であり、到底容認できない。
こうした批判に、習氏は自分自身のカリスマ化で対抗しようとしているようだ。人民日報など中国メディアは「人民領袖は人民を愛する」といった習氏をたたえる記事を連発している。だが、これでは国際不信を強めるだけだろう。
自由を抑圧する法制度
習政権は国民に政府の情報活動への協力を義務付ける「国家情報法」や国家のインターネット規制を合法化する「サイバーセキュリティー法」も成立させた。自由や人権などを抑圧しかねない法制度は、決して国際理解を得られない。