フィリピンで反日慰安婦像が行方不明
2017年12月に突如としてマニラ市に設置され、物議を醸したフィリピン人慰安婦像。その後、日本大使館の抗議が実り撤去されたが、このほどその慰安婦像が行方不明になっていることが分かった。慰安婦像がマニラ首都圏にある教会の敷地に、再設置されることが決定した直後だった。
(マニラ・福島純一)
台座は完成、再制作も
昨年4月にマニラ湾沿いの遊歩道から撤去された慰安婦像は、複数の支援団体によってマニラ首都圏パラニャーケ市にあるバクララン教会に再設置される計画だった。しかし、今月に予定されていた除幕式の数日前に忽然(こつぜん)と行方不明になったという。
慰安婦像は撤去後に制作者であるロセス氏の元に戻され、再設置に向けた修復を受けていた。しかし支援団体の代表によると、首都圏郊外にあるアトリエの敷地内に保管されていた慰安婦像が、25日の再設置前に何者かによって持ち去られたと、ロセス氏から伝えられたという。
地元紙は、慰安婦像の支援団体の一つである「フラワー・フォー・ロラス」の代表が、「慰安婦に沈黙を強いる影がある」と述べていると伝えており、再設置を阻む何らかの介入があった可能性もある。
慰安婦像は全長が2メートルもある銅像で、どのようにして持ち去られたのかは不明だ。何らかの圧力を受けたロセス氏が、再設置の拒否を強いられている可能性もありそうだ。
25日に行われた除幕式は、慰安婦像の台座となる記念碑のお披露目だけとなり、参加した元慰安婦の女性や支援者は、慰安婦像が印刷された横断幕を設置して抗議の声を上げた。
慰安婦像は2017年12月に、中華系の「トゥライ財団」が政府機関のフィリピン国家歴史委員会と協力して、マニラ市内のベイウォークと呼ばれる遊歩道に設置した。その後、日本政府からの抗議を受けたフィリピンの外務省が設置責任をめぐる調査を開始すると、マニラ市当局は、「設置許可を出す立場になく、許可を出すこともできない」と関与を全面否定し、違法に設置された可能性が浮上した。
ドゥテルテ大統領は当初、「憲法で守られた表現の自由であり私が止めることはできない」と容認する姿勢を示していた。しかし、しばらくすると「日本は彼女たちに謝罪し、助けるための資金も提供した」と指摘し、「もう終わったことだ」「日本を侮辱すべきではない」と述べ、日本政府が求める慰安婦像の撤去に支持を表明。一気に風向きが変わった。
そして2018年4月に設置場所の排水管工事という理由で、慰安婦像は一夜にして撤去された。ドゥテルテ氏は、「他国と敵対する方針は政府にはない」と述べ、私有地なら日本政府も表現の自由として認めるだろうとの考えを示し、今後、公共の場には慰安婦像を再設置しないよう支援団体にくぎを刺した。
その後、支援団体は私有地での設置場所を検討し、バクララン教会に決定した。バクララン教会はマニラ首都圏でも有数の知名度を誇る教会で、多くの信者が訪れることで知られている。もし慰安婦像が設置されれば以前よりも、より多くの人々の目に触れることも考えられる。
慰安婦像の台座の後ろにある壁には、旭日旗を背景に日本兵が全裸のフィリピン人女性を虐待しているという、教会の敷地にしてはかなり過激な壁画が描かれるなど、日本を非難するという明確な意図の下に設置場所を選んだ意思が感じられた。
すでに台座は完成していることから、このまま放置は考えにくい。行方不明の慰安婦像が発見できなければ、別の慰安婦像が制作されて設置される可能性もありそうだ。







