フィリピンで初の鳥インフルエンザ確認
収束急ぐ
マニラ首都圏から約80キロの距離にあるパンパンガ州で、フィリピンで初となる鳥インフルエンザの感染が確認された。農務省は検問を設置して感染地域を隔離する一方、同地域で飼育されているすべての鶏の処分を進めるなど、感染の封じ込めに追われている。感染源となった養鶏場が数カ月前から異常を認識されていたにもかかわらず、当局へ報告を怠っていた疑いも浮上している。(マニラ・福島純一)
養鶏場従業員ら感染か
大量死も報告怠る
フィリピン農務省は11日、同州サンルイス町を中心に、フィリピン初となる鳥インフルエンザ(H5亜型)の感染が確認されたことを明らかにした。同省は感染の拡大を防止するため、同地域の13カ所の養鶏場で飼育されている約20万羽の鶏の処分を命じ、被害を受けた農園や養鶏場に対し経済的な支援を行う方針を示した。処分された鶏1羽につき、所有者に80ペソ(約170円)が支払われ、復旧支援として特別ローンも提供される見通し。同州における経済的な損失は、少なくとも2億ペソ(約4億3000万円)に達すると推定されている。
また大統領府は事態の迅速な収束のために、国軍兵士の投入を検討していることを明らかにした。保健省は安全が確認されるための検疫期間が、90日間ほどかかる可能性を指摘している。
地元メディアによると、今年4月ごろから鶏に異常が確認されていたが、養鶏場の所有者は農務省にすぐに報告しなかった。そして3万羽以上が死亡した8月になって、ようやく農務省に報告し、異常の原因が鳥インフルエンザであることが発覚。隔離対策の初動が遅れたことで鶏の大量処分につながった。パンパンガ州のピネダ州知事は、報告義務を果たさなかったとして養鶏場の責任を追及する一方、同様のケースが起きないよう新たな条例を制定する方針を示している。
農務省は警察と協力し、同州やその近隣地域で検問を設置し、家禽(かきん)類やその卵、鶏肉などの移動を監視して感染拡大防止に努める一方、消費者に対しては、適切に調理すれば安全性に問題はないとしてパニックにならないよう呼び掛けた。
フィリピンのファストフード店ではフライドチキンが人気を集めるなど、鶏肉は常に大きな需要のある食材だが、感染が確認されたことで購入を避ける消費者が増加。鶏肉の値崩れが起きるなど、経済的な影響も広がっている。
また保健省は15日、同州の農園で働いていた従業員2人が、鳥インフルエンザに感染した可能性があるとして、病院の監視下にあることを明らかにした。2人はそれぞれ咳(せき)や発熱の症状が出ており、血液検査で感染の有無を確認する見通し。その一方で保健省は、鳥インフルエンザはヒトからヒトへの感染は不可能なことを強調し、国民に平静を呼び掛けた。
鳥インフルエンザの感染源に関しては、中国からの渡り鳥や密輸されたアヒルなどが疑われている。これを受け環境天然資源省は、密猟で渡り鳥を殺したり接触しないよう国民に警告した。フィリピンでは9月に渡り鳥のシーズンが始まり、翌年の3月に繁殖地に戻るという。死亡した野鳥などを発見した場合、迅速に報告するよう国民に協力を求めている。