マニラで相次ぐ爆弾事件
マニラ首都圏で爆弾事件が相次ぎ、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出すなど、テロへの警戒が強まっている。最初の爆発はASEAN首脳会議の厳戒態勢の中で発生。いずれの事件も、イスラム教徒が多く住む同じ地域で発生しており、警察の諜報能力を疑問視する声も強まっている。
(マニラ・福島純一)
警察の諜報能力の低さに懸念
上院議員が調査に乗り出す
マニラ市キアポ地区で6日、2回の爆発があり2人が死亡し6人が負傷した。警察によると1回目の爆発は午後6時ごろに発生して2人が死亡、4人が負傷した。さらにその数時間後、現場から数十メートルの場所で再び爆発があり、捜査活動に加わっていた警官2人が負傷した。現場はイスラム教徒が多く住む地区でモスクの近く。
最初の爆発は小包に入った爆弾によるもので、死亡したのはそれを運んでいたバイク便の従業員と、それを受け取った人物だった。
小包の宛先は現場近くの弁護士事務所になっており、シーア派イスラム組織の代表を務める弁護士を狙った可能性が指摘されている。しかし何らかの理由で、届けられる前に爆発した。警察は特定の人物の殺害を狙った犯行で、不特定多数の殺傷が目的のテロの可能性を否定した。
キアポ地区では、ASEAN首脳会議の期間中の4月28日にも爆発があり14人が負傷している。警察によるとバイクに2人乗りした男が、手製のパイプ爆弾を人混みに投げ込んだ。警察は地元ギャング同士の抗争との見方を示し、ASEAN首脳会議との関連を否定した。
いずれの事件でもISが、支配下のメディアを通して犯行声明を出しているが、警察は「注目を集めるために事件を利用している」と主張。具体的な証拠がないとして、IS犯行説を否定している。
同じ地域で立て続けに起きた爆弾事件を防止できなかったとして、国家警察への風当たりが強まっている。ホナサン上院議員は、今回の事件を受け国家警察の諜報能力に疑問を呈し、50億ペソの機密予算が、どのように使われているのかチェックする必要があると指摘。監視委員会の設置を提案した。
また元国家警察長官のラクソン上院議員は、今回のような事件が国のイメージを損ない、観光や投資などに大きな影響を与えると指摘。さらに事件が、厳戒態勢中に起きたことも問題視し、諜報活動における問題の追及を強く求めた。
デラロサ国家警察長官は、「どんな言い訳もできない」と諜報活動の失態を認めた上で被害者に謝罪。
しかしその一方で警察の諜報活動は、共産ゲリラやイスラム過激派に集中しており、個人的な対立や抗争を対象にしたものではないと説明。また、より大きな予算を扱う米国の諜報機関でも、テロを完全に防止することはできていないと弁明した。
しかし国際テロの専門家は、一連の爆弾事件がラマダン期間の本格的なテロ攻撃の予行演習だとの見方を示している。IS系メディアを使った犯行声明に関しては、誇張はするが虚偽の攻撃を主張する例はなかったと指摘し、信憑性があると分析。フィリピンの治安当局は、海外の関係機関と密接に協力し、ISに関する知識を向上させる必要があると指摘した。
フィリピン政府は、主要産業である観光業界への影響を恐れ、他国政府による注意喚起や渡航勧告を軽視する傾向が強い。
先月ボホール島に、外国人誘拐を狙うイスラム過激派アブサヤフが上陸し治安部隊と交戦となったが、直前に米国大使館が出していた渡航勧告に対して国軍は、「具体的な脅威は確認できない」と主張。ドゥテルテ大統領も、「なぜ米国が心配する必要があるのか」と述べ、渡航勧告に反発を示していた。
米国大使館は9日にも、パラワン州でテロリストが外国人を狙った誘拐を計画している情報があるとして、自国民に注意を呼び掛けている。






