中国6中総会、習氏「核心」に独裁への懸念


 中国共産党の習近平総書記(国家主席)が、党の「核心」に位置付けられた。中央委員会第6回総会(6中総会)がこのほど開催され、「習近平同志を核心とする党中央」と初めて明記した声明を採択した。

 危うさはらんだ船出

 毛沢東、鄧小平、江沢民元国家主席まで3代の最高指導者は「核心」とされたが、胡錦濤前国家主席は「核心」と呼ばれることはなかった。江氏が引退後も影響力を保持し、胡氏を牽制(けんせい)していたからだ。

 「虎もハエも叩(たた)く」というスローガンの下、習氏は反腐敗闘争で政敵を追い落とし、権力基盤を固めてきた経緯がある。習氏にとって「核心」のポジションを手にすることは権力の頂点に立ったことを意味する。

 だが習氏への権力集中には、内部で異論もくすぶっている。来年秋に開催される共産党大会での政治局常務委員ら最高指導部人事に向けた政治闘争が激しさを増すのは必至で、強権を手にした「一極体制」は同時に危うさもはらんだ船出となる。

 そもそも鄧小平が集団指導体制を敷いたのは、毛沢東時代の独裁政権がもたらした被害が甚大だったからだ。1958年からの大躍進運動では鉄鋼、穀物の大増産をあおって逆に何千万人といった餓死者を出した。

 人民解放軍を動員して穀物を食い荒らすスズメを退治したことがイナゴの繁殖につながり、穀物の大減産を招いたこともあった。ノルマ達成を義務付けられた現場指導者たちは水増しした成果を報告した。中国のデータの信憑性(しんぴょうせい)が低いのは、この時の悪弊が影響しているためだ。

 その意味で、習氏が個人独裁的な色彩を強めるかどうか警戒を要する。中国経済は長い高度成長が終焉(しゅうえん)を迎え「中進国」からの脱皮を求められている。労働集約型経済を次の段階に引き上げるイノベーション力が問われることになる。

 中国では、過剰在庫はダンピング輸出、有り余る労働者は「一帯一路」(海と陸のシルクロード)プロジェクトで海外へ押し出そうとしている。だが、こうした小手先のつじつま合わせで克服できる段階はとうに過ぎている。知識集約型など高付加価値への産業構造転換を図らなければ、持続力のある経済を維持することはできない。

 そのためにも自由な発想が保障される知的空間こそは、経済を底上げする大きな推進力になりこそすれ、妨げるものではない。だが、現実は反対の方向に向いている。習政権発足後、人権擁護の弁護士や活動家は取り締まられ、改革派の出版社やネット論壇が弾圧されている。

 重点大学では人権や自由といった普遍的価値を語ることは禁じられ、「報道の自由」も「司法の独立」も禁止用語となっている。こうした自由のない重苦しい知的空間は、毛沢東の文革時代さえ髣髴(ほうふつ)させる。

 愛国心利用に注意を

 中国共産党は経済成長を政権への求心力としてきたが、成長の鈍化や深刻な格差で共産党政権への信認度が低下すると、周辺国と摩擦を起こして愛国心に訴える可能性が高くなる。地域の平和と安定を揺るがす恐れがあるだけに注意を要する。