新興5ヵ国、枠組みの限界示した首脳会議


 インド南部ゴア州パナジで開かれていた新興5カ国(BRICS)首脳会議は、国際政治・経済に関する「ゴア宣言」を採択して閉幕した。

 足並みの乱れ浮き彫りに

 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのBRICS首脳は、農業と鉄道分野で共同研究機関を設けることで一致。また、連携を「制度化」していく必要から、BRICS独自の信用格付け機関設置に向けた準備を進めることでも合意した。

 しかし、主要議題のテロ対策では「すべてのテロ攻撃を非難する」ことで一致したものの、国際社会が連携して対処する必要性を強調するにとどまった。議長国インドのモディ首相は演説で「悲しいことに、テロ組織の母艦はインドの隣国だ」と暗にパキスタンを非難した。

 だが、共同宣言にはパキスタンを名指しして批判する表現は見られず、一般論に終始した。パキスタンの友好国である中国が強く反対したとみられる。

 発足当初のBRICSは新興経済の象徴として、欧米主導の国際秩序とは異なる基軸を担うと期待されたが、地理的に遠く、政治体制の異なる5カ国が歩調を合わせるのは難しい。今回の会議でもテロ防止のための具体策を打ち出せず、足並みの乱れが浮き彫りになった。

 インドの専門家らは「BRICSは、多くの政治的な問題についての価値観や立場を共有しておらず、その枠組み自体が時代遅れになりつつある」「各国の(思惑の)差異がBRICSの限界を示している」などと指摘した。首脳会議は、BRICSが難しい岐路に立たされていることを示したようだ。

 一方、首脳会議に先立って会談したモディ首相とロシアのプーチン大統領は、軍事、経済分野を中心に16件の合意文書に調印した。

 両首脳は最新鋭のロシア製防空ミサイルシステム「S400」の購入や、合弁会社による軍用ヘリコプターのインドでの共同生産で合意するなど、軍事面での両国の協力強化を確認。インド政府は同時に、フリゲート艦4隻をロシアから購入する方針を表明した。

 インドには軍備の近代化でパキスタンや中国に対抗する狙いがあり、ロシアへの依存を強めつつある。一方、ロシアは、欧米による経済制裁、国際的原油安などにより経済が低迷しているため、軍需産業を強化して、インドをはじめ新興諸国への武器輸出で景気テコ入れを図りたいところだ。

 両国はまた、ロシアの石油大手ロスネフチ率いる企業連合によるインドのエッサー・オイル買収といったエネルギー分野での協力をまとめた。契約によれば、ロスネフチ企業連合は129億㌦でエッサー・オイルの株式98%と、日量40万バレルの製油所を取得する。これは外資によるインド企業の買収額としては過去最大で、ロシア企業にとっても海外での買収額としては最大規模だと言われる。

 目立った印露の協力

 総じて、BRICS首脳会議の成果は乏しく、むしろ、会議外でのインドとロシアの2国間軍事・経済協力の再確認が目立ったと言える。