ドゥテルテ比大統領、世論調査で高い満足度維持

麻薬、犯罪対策に高い評価

 暴言や強権的な麻薬取り締まりで国際社会から批判にさらされているフィリピンのドゥテルテ大統領だが、国内では依然として高い支持を維持していることが最新の世論調査で明らかとなった。麻薬取り締まりをめぐっては、容疑者の殺害に反対する国民の声が多いことも分かった。(マニラ・福島純一)

暴言と外交には懸念も

 大統領就任から100日を迎えた6日、民間調査会社のソーシャル・ウェザー・ステーションが、ドゥテルテ大統領に関する世論調査結果を発表した。調査は9月24日から27日までに1200人の有権者を対象に全国的に行われたもので、ドゥテルテ氏の施政に関して「満足」との返答が76%に達していることが分かった。「不満足」との返答は11%で、「まだ判断できない」は13%だった。満足から不満足を差し引いた純満足度は65%となり、歴代大統領ではラモス元大統領の66%に次ぐ、極めて高い評価となった。在任中に高い支持率を維持したアキノ前大統領は60%だった。

ドゥテルテ大統領

4日、マニラで演説するフィリピンのドゥテルテ大統領(AFP=時事)

 地域別ではドゥテルテ氏のお膝元であるミンダナオ地方の85%がダントツで高い数値となっており、これにビサヤ地方が62%、マニラ首都圏が58%、ルソン地方が57%と続く結果となっている。男女別では女性が58%だったのに対し、男性は71%と同性からの圧倒的な支持を得ていることが分かった。

 就任直後の7月に民間調査会社パルスアジアが発表した世論調査で、91%の信頼度を獲得した時と比べると国民の支持は低下したが、国際社会で批判を集めている一連の暴言や外交姿勢が、それほど国民に影響を与えていないことも浮き彫りとなった。

 また7日にソーシャル・ウェザー・ステーションが発表した政府の麻薬撲滅活動に関する世論調査では、84%が「満足」と返答し、「不満足」は8%にとどまった。しかし麻薬容疑者の生死に関しては、「生きたまま逮捕することが非常に重要」との返答が71%に達し、ドゥテルテ氏の姿勢に疑問符が投げ掛けられる格好となった。

 アルバレス下院議長は、犯罪の大幅な減少と国家主権に関する姿勢でドゥテルテ氏を高く評価した。犯罪に関しては少なくとも50%減少しており、また欧米諸国に卑屈にならず国益を優先しているとしてドゥテルテ氏を称賛した。しかしその一方で、マニラ首都圏やセブ市などの都市部における深刻な渋滞問題に関しては、まだ絶望的な状態のままだと指摘し早急な対処を求めた。

 エヘルシト上院議員は、「最終的に有益であると判断すれば不評な決定もいとわない」とドゥテルテ氏の行動力を高く評価。その一方で「もう地方政治家ではないことを理解すべきだ」「早急に大統領の地位に適応してほしい」と指摘し、暴言を慎むようくぎを刺した。一方、上院でドゥテルテ氏の超法規的殺人を追及するデリマ上院議員は、「麻薬戦争だけに焦点を当てており、経済や貧困、渋滞問題などはないがしろにされている」と批判を展開した。ガチャリアン上院議員は、「外交面では特に改善の余地が多いが、多くの国民が彼の行動を感じることができた」と、世論調査の高い数値を分析した。

 国内でも暴言に関する懸念が少なからず指摘されているが、ドゥテルテ氏の反米発言はとどまるところを知らない。7日に地元ダバオ市で行った演説では、第2次世界大戦で起きたマニラの戦いで、20万人のフィリピン人が犠牲になったことを指摘し、「もし米軍がここにいなければ、こんな大破壊は経験しなかった」「フィリピンを玄関マットのように扱うな」と米政府を批判した。さらに中国がフィリピン国内にリハビリセンターを建設し麻薬戦争を支援している一方、米政府は大戦中の破壊活動にもかかわらず同様の申し出はいまだにないことを指摘し、「もし米国がフィリピンに尊敬を示さなければ、中国とロシアへの傾倒は避けられない」と述べ、米政府の人権問題に関する介入を警告。さらに「CIA(米中央情報局)を使って私を失脚させたいならやってみろ」と挑発した。

 国民の安定した支持を背景に、ドゥテルテ氏の反米・親中路線を基軸とする自主外交路線は、さらに加速しそうな雰囲気だ。