南シナ海問題、中国の主張認めず 初の司法判断・仲裁裁判所

国際社会圧力の根拠明確に

川村純彦氏

川村純彦氏

 今回の常設仲裁裁判所の判決は当然のもので、中国が無法国家であることが国際的に明白になった。今後、南シナ海における軍事的拡張を続けようとする中国に対して、国際社会からの強い圧力の明確な根拠となろう。

 一方、中国国内では、国民の批判が政府に向かうことは避けられず、習近平政権としては、それをいかにして回避するかが最大の関心事であり、これまでの行動の正当性を主張するために、さらに強硬な行動を取る可能性はある。

 しかし、中国の主張が否定されたことで、国際社会の一層の反発を招き、中国の孤立化が進むこととなるため手段は限られ、民兵を乗せた漁船群や公船を多数投入してのフィリピンなど周辺諸国の漁業活動などへの妨害が増える程度であろう。早速、ミスチーフ礁などで民間機の試験飛行を行ったが、これは人工島の建設が軍事基地化ではないことを主張するための最後の悪あがきであろう。

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中国による埋め立てが進む南沙諸島の(左上から時計回りに)クアテロン礁、ジョンソン南礁、ヒューズ礁、ファイアリクロス礁=全て5月上旬撮影(フィリピン国軍関係者提供)

 ただ、中国共産党一党独裁政権維持が中国の目的であり、強引な海洋進出はその正統性を証明するために不可欠な手段であるから、中国が外部圧力によって、その最終目的の放棄につながる膨張政策を変更することは考えられない。

 わが国は、米国を中心とする国際社会と緊密に協力して、中国国民に対して情報を提供し、中国政府の矛盾、暴挙を指摘する運動を早速開始すべきである。

(元統合幕僚学校副校長)