対北朝鮮制裁、慎重姿勢の中国を動かせ
米国のケリー国務長官が訪問先の中国・北京で王毅外相と会談し、北朝鮮による4回目の核実験を受けて国連安保理で検討する対北朝鮮制裁について協議した。
だが、王外相は対話による解決を訴え、北朝鮮を追い詰めるような厳しい制裁には慎重な姿勢を見せた。制裁には大筋で賛成しながら内容では日米韓と一線を画す中国のダブル・スタンダード(二重基準)がまたしても浮き彫りになった。
国際社会に逆行する態度
王外相は会談で、北朝鮮の核問題と関連し、韓半島の非核化、対話・交渉による解決、韓半島の平和と安定という中国の3原則に触れ、この立場は「喜怒哀楽によって変わるものではない」と念を押した。
これは裏返せば、北朝鮮が今後、中国の反対を押し切ったり、制止を無視したりして核実験に踏み切り、中国の感情を害したとしても、どこまでも話し合いで核放棄の道を模索すると宣言したに等しい。
北朝鮮の核問題をめぐり話し合いによる解決に限界があることは、2003年に始まった6カ国協議の経緯と結果が物語っている。対話は継続しつつも、北朝鮮が本気で核放棄に踏み出さざるを得ない制裁を科すことに国際社会はフォーカスを合わせ始めているというのに、中国の態度は明らかにこれに逆行するものだ。
中国税関総署がこのほど発表した統計によれば、昨年の中国から北朝鮮への原油輸出は前年に続きゼロだった。だが、北朝鮮で原油が不足しているという兆候は確認されていない。実際には年間約50万㌧を支援しているだろうというのが韓国政府の見方だ。
中朝貿易の大半を処理すると言われる中国・丹東では物流が統制されたという話は伝わってこない。国際社会の制裁が決定打に欠けるのは中国という「裏門」が開いているためだ。
北朝鮮は今回の核実験が「水爆」だったと主張していることもあり、当然、制裁はこれまでにない強力なものになる見通しだ。先日、東京で開かれた日米韓の外務次官協議では、強力な制裁が必要であると同時に中国の協力が欠かせないとの認識で一致した。
日本の場合、送金報告義務を大幅に厳しくするなど一昨年の日朝ストックホルム合意で緩和された独自制裁を元に戻すことや、再入国禁止対象を核やミサイル関連の技術者にまで拡大させる方向で検討に入った。
韓国も朴槿恵大統領が年頭の記者会見で、異例とも言える中国への協力要請を行ったのに続き、韓民求国防相は中国が反発している終末高高度防衛(THAAD)ミサイルの配備に言及した。
もはや制裁の効果は、中国がどこまで協力するかに懸かっていると言っていい。制裁に慎重な中国への「包囲網」を築き、中国を動かさなければならない。
拉致問題前進につなげよ
北朝鮮への制裁強化が叫ばれる今、日本としてはそれを膠着(こうちゃく)状態に陥っている日本人拉致問題の解決に向けた前進にもつなげたい。
(1月29日付社説)