フィリピン中部に台風直撃  復旧難航で暗闇のXマスに

インフラ壊滅し被害情報錯綜

台風22号(フィリピン名オデット)の直撃を受け甚大な被害が出たフィリピン中部では、依然としてインフラの復旧が難航しており多くの人々が不便な生活を強いられている。道路や通信の寸断により被害の把握も困難な状況となっており、死傷者の情報も錯綜(さくそう)するなど混乱が続く。
(マニラ・福島純一)

フィリピンを襲った台風で破壊された住宅=17日、南部スリガオ市(AFP時事)

 強い勢力の台風22号は16日にフィリピン中部の中部ビサヤ地方などを直撃し、壊滅的な被害を残した。災害リスク削減管理委員会(NDRRMC)が行った22日の発表によると死者は177人、負傷者275人、行方不明者38人となっている。しかしこれより早い段階で、国家警察が死者375人と発表するなど情報が錯綜しており、通信の断絶により被害の把握が難航している地域もあることから、今後さらに死傷者数が増えることも考えられる。

 また、NDRRMCによると台風による損害を受けた家屋は1万5000戸に及び、そのうち1万3000戸は完全に破壊。被災者は1300万人に達し、そのうち約45万人が避難所での生活を強いられている。

 中部ビサヤ地方の大都市で在留邦人も多く住むセブ市も大きな被害を受け、全域にわたって停電や断水、通信の断絶が発生。市内では生活用水や現金の引き出し、ガソリンの購入などのために長い行列が発生するなど市民生活は大きな混乱に見舞われている。

 他にも被害が大きかった北スリガオ州、ボホール島、シアルガオ島、ディナガット島においては、エネルギー省が年内の電力復旧は困難との見方を示すなど、暗闇の中でクリスマスを迎える見通しが濃厚となっている。

電柱がなぎ倒されたフィリピンの台風被災地=18日、中部セブ島タリサイ(AFP時事)

 これらの地域では、多くの観光客などが空港や港で足止めされており、シアルガオ島では救援に駆け付けた空軍機により約140人の人々が脱出した。中にはこのような状況を利用し、高額な料金を請求するボート運行者がいることも報告されるなど、被災者の困難な状況に拍車を掛けている。

 また、ボホール島では台風の被害による孤立で食糧や生活用水の不足が深刻化しており、一部地域で略奪が発生するなど治安の悪化が懸念されている。ヤップ州知事はドゥテルテ大統領に対し早急な食糧支援を求める一方で、もし不可能な場合は治安維持のために警官や軍隊を派遣するよう要請した。

 このような状況を受け、ドゥテルテ大統領は被害が大きかった地域で災害事態宣言をする一方で、被災者の支援のため20億ペソ(約45億5000万円)の予算を充てることを約束し、迅速な食糧支援とインフラの復旧を関係当局に命じた。

 しかし、年内に再び台風がフィリピンに上陸する可能性もあり緊張が高まっている。フィリピンの気象当局は21日、フィリピン付近の海上で確認された低気圧が60~70%の確率で熱帯低気圧に成長し、台風22号が直撃したフィリピン中部に再び接近する可能性があると分析。フィリピンの領域にクリスマス後の26日ごろに到達する可能性があるとして注意を呼び掛けている。

 台風22号の被災地では依然として電力などが復旧していない地域も多く、再び台風が上陸すれば大きな混乱に見舞われることが予測される。