フィリピン南部 連続自爆テロで14人死亡

 フィリピン南部で連続自爆テロがあり、14人が死亡し78人が負傷する惨事となった。イスラム過激派アブサヤフの副司令官が逮捕されたことに対する報復と考えられており、国軍兵士が狙われたが民間人も多数巻き添えとなった。さらなる自爆テロを計画しているとの情報もあり、治安当局が警戒を強めている。(マニラ・福島純一)

犯人はインドネシア人女性か
アブサヤフ副司令官逮捕に報復

 スルー州ホロ町で8月24日、連続爆弾テロがあり兵士7人、民間人6人、警官1人が死亡し78人が負傷した。国軍は2回の爆発はいずれもインドネシア人女性を使った自爆テロだとの見方を示した。そのうち1人は2019年に同州で8人が死亡した自爆テロで、フィリピン人初の自爆犯となった男の妻。もう1人の自爆犯はアブサヤフの爆弾専門家の妻とみられている。司法省が自爆犯のインドネシア人について、渡航記録などをインドネシア大使館と連携して調べている。

ホロ

 

 今回の自爆テロは、ミンダナオ島ダバオ市で8月13日にアブサヤフの副司令官が逮捕されたことへの報復との見方が強まっている。逮捕されたイダン・ススカン容疑者は、15年に起きたイタリア人神父の誘拐や殺人などで複数の逮捕状が出ていた。

 当局によるとススカン容疑者は、今年4月にホロ島でモロ民族解放戦線(MNLF)のミスアリ氏に降伏した後、戦闘で失った左腕に義手を装着するため8月10日にホロ空港からダバオ市を訪れていた。そこでミスアリ氏に説得されて警察に引き渡された。治安当局はアブサヤフの報復の可能性もあるとみて、警戒態勢を強化していたが、結果的に阻止できなかった。

 自爆テロを受けマニラ首都圏警察は首都圏にある空港や港、政府施設などで警戒を強化した。警察関係者は、すでに新型コロナ対策で各都市の境界に検問が設置してあり、これがテロの脅威に対する治安対策として機能すると説明。また、ススカン容疑者が逮捕されたダバオ市でも緊張が高まり、報復に備え治安当局が警戒を強化した。

 一方、ソベハナ陸軍総司令官はスルー州に、テロ対策として再び戒厳令を敷くことをロレンサナ国防長官に提言した。

8月24日、フィリピン南部ホロ町で、爆発の負傷者を運ぶ軍人たち(AFP時事)

8月24日、フィリピン南部ホロ町で、爆発の負傷者を運ぶ軍人たち(AFP時事)

 8月31日にホロ島を訪問したドゥテルテ大統領は演説で、アブサヤフと対話する姿勢を打ち出しながらも「もし合意に至らなければ最後の1人まで戦うしかない」と述べ、国軍に掃討作戦の準備を命じた。自爆テロ現場を訪れたドゥテルテ氏は、その場でひざまずき地面に接吻(せっぷん)を行って死者を弔った。

 自爆テロをめぐる緊張はまだ続いており、ミンダナオ島のサンボアンガ半島では、3人のアブサヤフがテロ目的で侵入したという情報があり、当局が警戒を強めている。8月31日にサンボアンガ市の市長はアブサヤフに関連するインドネシア人の男女とフィリピン人の3人がサンボアンガ半島にテロを起こす目的で侵入した可能性があるとして、300万ペソの報奨金を懸け市民に情報提供を求めた。治安当局は、新型コロナ対策で設置された各地の検問で警戒をさらに強化する方針だ。

 国軍は自爆テロの首謀者と2人の共犯者の2人のインドネシア人が、まだスルー州内に潜伏しているとみて行方を追っている。

 29日には同州で捜索活動中の国軍部隊がアブサヤフに遭遇して交戦となり、兵士1人とアブサヤフ2人が死亡している。