ウイルス発生源、中国の隠蔽は許されない


 新型コロナウイルスの発生源について、真相究明を求める動きが国際社会で広がっている。

 中国はこうした動きに応じようとしていないが、都合の悪い事実を隠蔽(いんぺい)する意図があるとすれば許されない。

 豪首相が国際調査を提案

 オーストラリアのモリソン首相は、発生源や感染拡大の経緯に関して「独立した調査が必要だ」と強調。中国を含む世界保健機関(WHO)加盟国は調査を受け入れるべきだとも主張し、5月に開かれるWHO総会で提案する考えを示した。

 昨年12月以降、中国湖北省武漢市では市内の海鮮市場を中心に多くの肺炎患者が発生した。ただ、最初の患者とされた住民は市場に行ったことがなく、発生源や感染経路には不明な点が多い。

 一方、本紙姉妹紙である米紙ワシントン・タイムズは今年1月、武漢ウイルス研究所から「新型コロナが流出した可能性がある」というイスラエル軍元関係者の分析について報道。このほか、多くの有識者も流出説を主張してきた。

 こうした中、トランプ米大統領は、同研究所からの流出が「理にかなっているようだ」との認識を示した上で「われわれは真相を突き止めるだろう」と述べ、本格的な調査を進めていることを明らかにした。

 新型コロナの感染者は全世界で約300万人に達し、死者は20万人を超えた。これだけ甚大な被害が出ている以上、国際社会が発生源や感染拡大について真相を究明しようとするのは当然である。

 しかし、肝心の中国は後ろ向きだ。モリソン氏の提案に対して中国外務省の報道官は「国際的な防疫協力を妨害する」と否定的な見解を示している。

 だが国際的な調査を受け入れないのであれば、自国に都合の悪い事実を隠蔽していると疑われても仕方があるまい。ポンペオ米国務長官はウイルスの発生源について、中国が初期の段階で武漢ウイルス研究所を調査していたと指摘している。

 中国の国営メディアは、同研究所研究員の「われわれには厳格な管理制度がある。(発生源では)絶対にあり得ない」との証言を伝えた。こうした主張も、透明性を確保した国際調査を経た上でなければ信頼を得られないだろう。

 国際社会が中国に厳しい目を向けるのは、中国が情報隠蔽と初動の遅れで新型コロナの感染を拡大させたためだ。この上、国際調査を拒むことは決して容認できない。

 新型コロナの感染拡大で国際社会が対応に追われる中、中国は南シナ海で行政区を新設するなど不法な支配を強めている。中国共産党政権は人類の生命や健康よりも一党独裁体制の維持と対外膨張に重きを置いていると言わざるを得ない。

 国際社会は圧力強化を

 米議会では、感染拡大について中国の責任を追及する動きが進んでいる。与党・共和党のトム・コットン上院議員とダン・クレンショー下院議員は、米国人が中国に損害賠償を請求できるようにする法案をそれぞれ上下院に提出した。中国に対する国際圧力を強める必要がある。