【社説】アジア欧州会議覇 権主義強める中国に対抗を


ミシェル大統領

 アジアと欧州の53カ国・機関で構成するアジア欧州会議(ASEM)の首脳会議がオンラインで行われた。

 会議では、インド太平洋地域への関心を強める欧州が民主主義の価値観の重要性を強調し、とりわけ中国の強権的な姿勢に警戒感をにじませた。

 台湾重視のバルト3国

 カンボジアのフン・セン首相が議長を務めた会議で、欧州連合(EU)のミシェル大統領は「アジアのパートナーの多くはわれわれと同じ考えを持っている」「ルールに基づく国際秩序を信じている」と述べ、中国を暗に批判した。議長声明では、ベトナムやフィリピンなど東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部の国と中国が領有権を争う南シナ海問題への直接的な言及は避けたが、緊張を高める動きについて「首脳が懸念を表明した」と記した。

 このところ欧州各国は、インド太平洋への関与を強めている。英国は最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を南シナ海や太平洋に派遣したほか、日本やインドと連携枠組み「クアッド」を構成する米国やオーストラリアと共に、新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設した。

 インド洋や南太平洋に海外領土を持ち、90%以上の排他的経済水域(EEZ)をインド太平洋地域に持つフランスは5月、陸軍が陸上自衛隊や米海兵隊と離島防衛を想定した共同訓練を九州で行い、海軍が海上自衛隊や米豪両海軍との共同訓練を東シナ海で実施。ドイツもフリゲート艦「バイエルン」をインド太平洋に派遣し、11月にはドイツ軍艦として19年ぶりに日本に寄港した。いずれも中国の覇権主義的な海洋進出を念頭に置いたものだ。

 このほか、バルト3国のリトアニアが台湾に代表機関「駐リトアニア台湾代表処」の開設を許可。リトアニア、エストニア、ラトビアの国会議員による台湾訪問団が蔡英文総統と会談するなど、中国の圧力を受ける台湾との関係を重視する動きも見られる。これは「自由で開かれたインド太平洋」実現を目指すクアッドと軌を一にするものだと言えよう。

 岸田文雄首相は会議で、中国政府による人権弾圧が問題になっている新疆ウイグル自治区や香港などの状況について「強く懸念している」と言及。さらに東・南シナ海における中国の覇権主義的な海洋進出を念頭に「現状変更の試みや緊張を高める活動がエスカレートしている。法の支配に逆行する動きも見られ、これらに強く反対する」と強調した。

 日本をはじめとするアジアの民主主義国は、自由、人権、法の支配などの普遍的価値を共有する欧州との連携を強化し、共産党一党独裁体制の中国に対抗すべきだ。

 日本は関係強化へ調整を

 会議ではクーデターで国軍が権力を掌握したミャンマー情勢についても話し合われ、議長声明は「深い懸念」を表明して民主化と和解を促した。

 欧州がASEANとの関係を深め、情勢の打開に影響力を発揮できるよう、日本は調整に動く必要がある。