南北関係、安保改善の道は統一
2016 世界はどう動く-識者に聞く(7)
米ジョージタウン大学安全保障研究センター副所長
デービッド・マックスウェル氏(下)
韓半島統一の可能性をどう見る。
統一には四つの道がある。一つ目は、韓国の朴槿恵大統領が(2014年3月にドイツの)ドレスデンで発表したような平和統一だ。しかし、これは北朝鮮が合意する必要があり、最も困難な道だ。平和統一はまた、政治、経済、安全保障システムや文化の統合が必要なため、最も複雑な道でもある。
一方、残念ながら最も簡単な統一の道は戦争だ。もし北朝鮮が韓国に攻撃を仕掛けたら、北朝鮮が敗れた後に韓半島は統一されるだろう。そうなれば統一は容易になされる。しかし我々は韓半島や東アジアで血が流れるのを望んでいないし、戦争をしたくない。
第三の道は北朝鮮の体制崩壊だ。問題は、体制崩壊する前に金正恩第1書記が戦争を決断する可能性があることだ。韓国と戦争をしなくても、北朝鮮で内戦が勃発する可能性がある。
第四の道は、北朝鮮内部に反体制派が出てくることだ。反対派の指導者が正恩氏を排除し、北朝鮮が生き残る唯一の方法として統一を考える道だ。
ただ、どういうシナリオになろうと、平和統一に必要な準備をしなければならない。だから朴大統領が発表したドレスデンでの平和統一構想は非常にいいスタートになる。正恩氏が統一を望んでいなくても、準備をすることは有用だ。
統一は、政治的な問題があっても日米中露といった地域の大国に受け入れられるだろう。結局は、韓半島における安全保障の問題を改善できる唯一の方法と言える。韓国人の多くも経済的な負担や韓半島有事を危惧しているものの、統一を望んでいる。
問題は、北朝鮮の体制崩壊や戦争など起きる可能性がある危機のシナリオのゆえに、統一の計画を立て、支援することに対し、各国が思考停止状態に陥っていることだ。統一はしたいが、たどり着く方法が分からないために計画できない、一種のパラドックスに陥っている。
米国は統一をどう支援すべきか。
米国と韓国は同盟国であるため、もし戦争や体制崩壊が起こって軍隊が北朝鮮に行く状況になったら、米国も手助けすべきだ。
その場合、米国主導の作戦ではなく、米国は後方支援や人道支援、情報提供をすることになる。核兵器の回収でも大きな役割を果たせる。
韓半島有事の際に在沖縄米軍はどのような役割があるか。
韓半島で不測の事態が発生したら、在沖米軍の空軍と海兵隊、基地は後方支援に使われる。米国本土から来る部隊や国連軍が準備のために沖縄を通るとき、補給や後方支援などを行うことになる。このため、韓半島有事の際に沖縄の基地は戦略的に非常に重要になる。
もし韓半島統一が実現した場合、米軍は韓国の駐留を続けることになるか。
状況によるだろう。統一がなされた後も米韓同盟が必要かどうか判断する必要がある。韓国が米軍の駐留を望んだら、引き続き駐留することになる。
ただ、中国は確実に韓半島から米軍を追い出すための圧力をかけるだろう。これは統一後の最も複雑な問題の一つだ。
日韓関係の改善は東アジアの安全保障にどう影響があるか。
北朝鮮の脅威と地政学的な位置から見ると、日韓は自然な同盟国であるべきだ。歴史問題で日韓関係が改善すれば、相互の防衛能力、特にミサイル防衛の分野を向上させられる。
(昨年末の)「慰安婦」問題の合意は米国も長い間望んでいたものだ。しかし、日韓両国で合意が妨害される可能性があることを考えると、楽観的ではいられない。ただ、日韓で政治的な摩擦があっても、両国の軍当局者はプロなので協調していくだろう。
(聞き手=ワシントン・岩城喜之)