精強自衛隊に欠かせぬ訓練
前回の防衛レーダーで「災害派遣などで、自衛隊を便利屋的に使い過ぎることは、精強さの低下に繋(つな)がる」と書いたら、「便利屋」という表現は使うべきではないというご意見をいただいた。
確かに「便利屋」の意味を辞書で調べてみると、「配達・修理などのちょっとした雑用をすることを業とする人」とある。自衛隊の活動を雑用と同列に扱うことは、自衛官の皆さんに失礼に当たるかもしれない。では、「便利屋」に代わる表現として、何が良いのか。「自衛隊はスーパーマン」「自衛隊は最後の砦(とりで)」…。
自衛隊は国防という崇高な任務を担っている。災害派遣も自衛隊にとっては任務の一つであるが、やはり災害派遣に忙殺されて、十分に訓練ができなくなれば、間違いなく部隊の精強さは低下する。訓練時間を確保できなくなれば、部隊運用上も支障を来す。
つい最近、部隊指揮官の経験がある陸上自衛隊の先輩とお会いする機会があった。先輩も私と同じ問題意識を持ち、訓練時間もさることながら、訓練で使用できる弾薬も十分な量の備蓄がないことを嘆いていた。
自衛隊はPKO(国連平和維持活動)などには参加してきたが、一度も紛争地域での戦闘を経験したことがない組織だ。そのため、自衛隊は有事に戦えるのかという不安を抱いている国民もいるだろう。ならば、戦闘経験がない分、訓練でカバーするしかない。
陸上自衛隊の日ごろの訓練成果を披露するのが、毎年8月に数万人を招待して行われる東富士演習場での総合火力演習だ。演習では陸自の戦闘職種(普通科、特科、機甲科、施設科)および航空科を中心に訓練成果を披露する。総火演を一度でも見たことのある人は、陸自の練度の高さを認識するに違いない。
一部の反自衛隊の思想を持っている国民は別だが、大多数の国民は自衛隊に期待している。自衛隊も国民の期待に応えようとしている。
災害派遣だけでなく、有事に戦える精強な自衛隊であってこそ、国民の期待に応えることができるのである。
(濱口和久)