防大生は「靖国」で誓いを

 防衛大学校の年間行事の中で最も有名なのが、各大隊(4個大隊)対抗の「棒倒し」競技だ。毎年11月に開催される開校記念祭の目玉でもある。テレビ番組でも度々、練習風景から本番までを密着取材している。また、激しくぶつかり合うので、ケガをして担架で運ばれる学生が数人は必ず出る。

 「棒倒し」以外にも、学生たちが計画して行う伝統行事が年間を通じていくつかある。その一つが「靖国行軍」だ。

 毎年、開戦記念日である12月8日前後の土曜日の午後に防衛大を出発し、東京・九段の靖国神社までの約70キロを夜間行軍するというもの。そして翌朝、靖国神社に到着すると、昇殿参拝し、宮司の講話を聞く。その後、千鳥ケ淵戦没者墓苑に参り、防衛大に戻るという1泊2日の行事だ。

 ところが、現在は「靖国行軍」から「東京行進」に名称が変わっている。名称が変わったのは、五百旗頭真氏(現・熊本県立大学理事長)が防衛大学校長の時からである。

 五百旗頭氏は、小泉純一郎首相(当時)の靖国参拝を批判し、学内の学生に対する学校長講話等でも、東京裁判史観を肯定する話を展開していたことは有名だ。学校長が五百旗頭氏から国分良成氏に代わっても、「東京行進」の名称で行事が行われている。

 朝雲新聞(1月25日付)に防衛大4年の学生が、「『東京行進』を終えて」というタイトルで寄稿していた。

 内容を読んで愕然(がくぜん)とした。「靖国行軍」の頃は、靖国神社に参拝することが主目的であり、千鳥ケ淵戦没者墓苑に参るのは、その次であった。ところが、昨年の「東京行進」では、千鳥ケ淵戦没者墓苑に参ることが主目的で、靖国神社への参拝は、その次となっているではないか。

 寄稿した学生は、千鳥ケ淵戦没者墓苑で「任官して幹部自衛官となった際には、祖国に殉じた英霊の皆様に恥ずかしくないよう、全身全霊をかけ、この国の防衛に尽くします」と誓った、と書いている。母校の先輩の1人として、参加した学生には、靖国神社で同じ誓いをしてほしかった。

(濱口和久)